どもども。
コンプレッサー編第2回目の今回は、コンプレッサーのパラメータについて解説していきたいと思う。
コンプレッサーの主要なパラメータ
コンプレッサーのパラメータは初心者にとっては聞いたこともないような名前のものが多い。
狙った場所を上手に圧縮できるように、各パラメータが「音の圧縮」にどう関わっているのかをしっかりと理解しておきたい。
今回はWavesのRenaissance Compressor(R-Comp)を使って解説させてもらう。
Threshold(スレッショルド)
コンプレッサーの作動条件を設定するパラメータ。
コンプレッサーはこのスレッショルドで設定した値より大きいレベルの音が入力されたときにスレッショルドを超えた部分を対象として音のレベルを圧縮する。
例えば、以下のような波形があったとすると、
スレッショルドを-6dBに設定した場合 → レベルが-6dBを超えた部分を対象に音を圧縮。
スレッショルドを-12dBに設定した場合 → レベルが-12dBを超えた部分を対象に音を圧縮。
といった感じになる。
気をつけたいのは、音を何dB圧縮するかというものではないという点。
例えば、レベルのピークが-6dBの波形にコンプレッサーを挿してスレッショルドを-3dBに設定したとしてもコンプレッサーは音の圧縮を行わない。
なので、プラグインにあらかじめ用意されているプリセットなどを使用する場合は、圧縮したい場所にスレッショルドの値がちゃんと届いているかに注意する必要がある。
よくある例としては、
何となくコンプを挿す。
↓
プリセットを適当に選ぶ。
↓
なんだか音が大きく聴こえるようになった。
↓
コンプ簡単。
こんな場合。
プリセットを使ったときはコンプレッサーを挿したトラックのレベルメーターを確認してみてほしい。
もしもコンプレッサーを挿す前よりもレベルが大きくなっていた場合、コンプレッサーが適正に使われていない可能性がある。
っというのも、プリセットはこちらが用意した素材のことなど何も考えちゃいない。
場合によっては圧縮したい部分にスレッショルドが届いていない可能性があるわけだ。
コンプレッサーで音を圧縮した場合、圧縮によって小さくなったレベルをコンプレッサーのOUTPUT GAINで持ち上げる場合が多い。
プリセットも然り。
ということは、もしもスレッショルドが圧縮したい部分に届いていない状態だとしたら、圧縮をせずにOUTPUT GAINでレベルを大きくしただけの状態になってしまう。
これは、各トラックのレベルフェーダーでレベルを持ち上げるのと一緒。
・・・そりゃ大きく聴こえるわ。
っということである。
初心者にとってプリセットは非常に便利ではあるのだが、最低限スレッショルドが自分が圧縮したい部分に届いているかは確認をしたほうがいい。
そもそも自分が圧縮したい部分がどこなのかがわからないという人は、自分が何のためにコンプレッサーを挿しているのかがよくわかっていない可能性が高い。
「自分がどんな目的でコンプを挿したのか」、「どこを圧縮すればその目的を達成できるのか」を考えてみてほしい。
この辺りについては、この講座でも次回以降に解説していきたい。
また、これはネット上や雑誌の情報についても同じことが言える。
「スレッショルドは-◯dBに設定・・・」
っというような記述があった場合は、はたしてその設定で自分の潰したいところがきちんと潰せているのかを確認したほうがいい。
スレッショルドが無い場合も
ビンテージタイプのハードをモデリングしたコンプレッサーの場合、このスレッショルドをコントロールするパラメータが搭載されていない場合が多い。
こんな重要なパラメータなのに何故?っと思ってしまうが、厳密にはスレッショルド自体が無いというわけではなくあるにはあるが固定されているということだ。
こういったタイプのコンプレッサーの場合、スレッショルド値がコントロールできない代わりにINPUTレベルをコントロールするパラメータが搭載されている。
このINPUTレベルをコントロールすることで固定されているスレッショルド値に波形をどれだけぶち込んでやるかを調整することで圧縮する場所を設定してやるわけだ。
Ratio(レシオ)
スレッショルドを超えた音をどのくらい圧縮するかを設定するパラメータ。
例えば、
レシオを2:1に設定した場合 → スレッショルドを超えた部分を1/2のレベルまで圧縮する。
レシオを4:1に設定した場合 → スレッショルドを超えた部分を1/4のレベルまで圧縮する。
レシオをInf(∞:1)に設定した場合 → 限りなくスレッショルドで設定したレベルまで圧縮する。
といった感じになる。
また、レシオの値を限りなく大きい値(INF、∞)に設定した場合、スレッショルドを超えた音は限りなくスレッショルドの値まで圧縮され、結果的にスレッショルド以上の音を出力しない状態になる。
これがいわゆるリミッターやマキシマイザーと呼ばれるエフェクト。
逆にレシオの値が1に近くなるほど圧縮する量は小さくなる。
Attack(アタック)
レシオで設定した圧縮率までどのくらいの時間をかけて到達するかを設定するかを決めるパラメータ。
例えば20ms(1msは1000/1秒)に設定した場合、音がスレッショルドのレベルを超えてから20ms後にレシオで設定した圧縮率に到達する。
ここまでの説明ではあえて触れてこなかったが、音のレベルがスレッショルドの値を超えたときコンプレッサーが圧縮を開始するまでには多少のタイムラグがある。
コンプレッサーは、
「あい!今まさにレベルがスレッショルドの値を超えたから今すぐ1/4の大きさに圧縮してくれ!」
という指示が出たとき、
「え?マジで?じゃ今から潰すわ。」
っという具合に音を潰すわけだが、この「え?マジで?じゃ今から潰すわ。」に数千~数万分の一秒の時間を要するのだ。
つまり、先ほどまで使用していた図は実際には以下のようになる。
さらに、コンプレッサーは最初からレシオで設定した圧縮率で圧縮することが出来ない。
こちらも数万~数千分の一秒の話だが実際はある程度の時間をかけてレシオで設定された圧縮率まで辿り着く。
で、一般的なコンプレッサーはこの「ある程度の時間」を一定の範囲でコントロールできるようになっている。
これがアタック。
さっきの例で言えば、
「あい!今まさにレベルがスレッショルドの値を超えたから今すぐ1/4の大きさに圧縮してくれ!」
という指示が出たとき、
「え?マジで?じゃ今から潰すけど、どんくらいの時間をかけて1/4の大きさまで圧縮する?最速で〇秒、最遅で〇秒だけど。」
こんな感じ。
この問いに答えるためのパラメータがアタックというわけだ。
「じゃあ最速で!」
っという場合はアタックを最速に、
「なるだけゆるやかに!」
っという場合はアタックを遅めに設定してやればいい。
例えば、
波形のド頭を潰したい場合 → アタックを早めに設定。
波形の余韻部分を潰したい場合 → アタックを遅めに設定。
こんな感じになる。
注意点としては、アタックは「圧縮を開始する時間」を設定するパラメータではないということ。
アタックをいくら遅く設定したとしても、「え?マジで?じゃ今から潰すわ。」以降はゆっくりと圧縮が開始されている。
Release(リリース)
音のレベルがスレッショルドの値を下回ったとき、どのくらいの時間をかけて圧縮を解除するかを設定するパラメータ。
「・・・あれ?・・・ちょっと待て。コンプが圧縮するのはスレッショルド値を上回る部分だろ?スレッショルド値を下回ったときは関係ねーじゃねーか。」
っと思ったそこの君!
・・・スケベだね!
そのとおりなのだが、実はアタックの時と同様、コンプレッサーが圧縮を解除するには多少の時間を要する。
「スレッショルドの値を下回ったぞ!速効で圧縮を解除しろ!」
っという指示が出たとき、
「え?マジで?じゃ止めるわ。」
という具合に圧縮を解除するわけだが、この「え?マジで?じゃ止めるわ。」の間は圧縮が続いているわけだ。
このことを考慮すると、実際は以下の図のようにスレッショルドを下回ってもしばらくの間は圧縮が続いていることになる。
・・・ちょいと無理くりな図になってしまっているが、イメージとしてはこんな感じで相違ない。
ま、あくまで説明用ということでご理解いただきたい(汗)
このスレッショルドの値以下の部分の圧縮の比率がレシオで設定した比率と同じかどうかはよくわからないが、とにかくコンプは急に止まれないのである。
すると、コンプが最速で圧縮を解除しようとすると波形がこんなことになってしまうことになる。
圧縮が解除されたと同時にレベルがボーンと膨れ上がってしまっているのがわかると思う。
これがいわゆる「ポンピング」という現象。
これじゃあコンプなんて使えたもんじゃない。
ということで、一般的なコンプレッサーは圧縮解除までの時間を一定範囲でコントロールできるようになっている。
これがリリース。
こいつをコントロールして圧縮を止めるまでの時間を調整してやるわけだ。
例えば、今回の例であればリリースを以下のように設定してやればポンピングを回避するとこができるということになる。
じゃあとにかくリリースを最遅にしておけばいいのでは?と思う人もいると思うがそう単純でもない。
たとえば以下の図のように次の音が近くにある場合、圧縮が解除される前に次の音を迎えてしまう。
こうなると、コンプレッサーはたとえスレッショルド以下のレベルの音であっても圧縮してしまうのだ。
ということでリリースは自然に圧縮が解除される且つ、次の音を潰さないような絶妙な位置に設定してやる必要がある(コンプかかりっぱなしにする場合などは別)。
まあ、ものすごくシンプルに「圧縮を継続させる時間を設定するパラメータ」だと考えてもらっても問題はないと思うが、いずれにしても「ポンピング」と「次の音」には注意をしたほうがいい。
Gain(Output Gain/ゲイン)
コンプレッサーで圧縮した音の出力レベルをコントロールするパラメータ。
コンプレッサーで音を圧縮すると圧縮前に比べて当然レベルは減少する。
目的によっては圧縮前と同じ、もしくはそれ以上に大きく聴こえるようにしたい場合もあるので、その場合はこのGainで圧縮後の音の出力レベルを調整してやる。
Gain Reduction(ゲイン リダクション)
音をどのくらい圧縮しているかを確認するメーター。
コンプレッサーの各パラメータの効き具合を把握するための実は何気に超重要なメーターだったりする。
見方としては、
圧縮量全体 → スレッショルド、レシオ、アタック、リリース
メーターの反応速度 → アタック
メーターが0に戻るスピード → リリース
といった感じ。
より具体的な見方については次回以降に詳しく解説していこうと思うが、初心者の人はとにかくこのゲインリダクションが「動いているか」は最低限確認してほしい。
動いていなければそれは圧縮が全く行われていないということ。
プリセットなどを使用したとき、音は大きく聴こえるようになったけどゲインリダクションが動いてないという場合は、ただ出力レベルが大きくなっただけということになる。
まとめ
今回はここまで。
簡単にまとめると、
・Ratio:何対1に圧縮するか
・Attack:どのくらいの時間をかけてRatioで設定した圧縮率に到達させるか
・Release:どのくらいの時間をかけて圧縮を解除するか
・Gain:圧縮後の素材をどのくらいのレベルで出力するか
・Gain Reduction:圧縮量
こんな感じになる。
これらのパラメータを駆使して狙った場所を狙った分だけ圧縮してやる。
次回は、具体的な使用例に入る前にコンプレッサーの種類について少し触れていこうと思う。
ではでは。