超初心者のためのミキシング講座/コンプレッサー編⑧【初心者がコンプレッサーを使うときのコツ】

どもども。

今回は我々素人がコンプレッサーをうまく使いこなすための、ちょっとしたコツみたいなものをまとめてみようと思う。
次回からは実践編に移る予定なので、少しでもコンプに対する苦手意識を払拭しておくべし!

目的をしっかりと持つべし

「コンプって何をするエフェクトなの?」

DTM経験者にこんな質問をすると、実に様々な答えが返ってくる。
『アタック感を出すエフェクトだ』と答える人もいれば『音圧を稼ぐエフェクトだ』と答える人もいる。
『ツブを揃えるエフェクトだ』と答える人もいれば『迫力を出すエフェクトだ』なんて答える人もいる。

「結局何が正解なんだよ?」

と初心者は頭を悩ませてしまうわけだが、どれも間違いではない。
コンプは様々な目的で使われるエフェクトなのだ。
まあ今は至る所に情報が落ちている時代。
筆者のような極端にMに偏った変態なんぞに言われなくてもどこかでそんな情報を得ているとは思うが、この『コンプは様々な目的で使われる』という知識がマイナスに働いてしまう場合がある。

例えば『レベルの大小差を小さくする』という目的でコンプを挿したとしよう。
ネットや雑誌を読んで事前勉強は完璧!
いざ実践!

「・・・こんな感じか?・・・こんな感じか?」

なんて具合にしばらくパラメータをイジっていくと・・・・無意識のうちに・・・当初の目的とは全く関係のないことに集中している場合がある
レベルの大小差を小さくする目的でコンプを挿したのに、いつの間にかアタックをコントロールしようとしてみたり、音圧を稼ごうとしてみたり。
人間とは欲深い生き物だ。
知らぬ間にできること(知っていること)を全部やろうとしてしまう。
前回までにも何度かウンチクったが、コンプレッサーというエフェクトは使用する目的によって波形のどこを圧縮するか、すなわちターゲットが変わってくる。
複数の目的を同時にこなすということはターゲットが複数になるということ。
ターゲットが増えればそれだけパラメータを追い込むことが難しくなる。
1つのコンプで全てのターゲットを仕留められるのであればそれでOKなのだが、初心者がこれをやろうとするとパラメータをうまく追い込んでいくことができず超高確率で迷宮入りする。
当初の目的とは全く関係のないターゲットを仕留めることに四苦八苦し・・・・意識が当初の目的からズレていき・・・・終いにゃ自分が何のためにそのコンプを挿したのかを忘れてしまう。

目的を見失わないこと

これが素人がコンプレッサーを上手に使うための最大のポイントだったりする。
とにかく自分がそのコンプを挿した目的を最後まで忘れないこと。
これを意識するだけでもかなり迷走を避けられる。
他に気になるところが出てきてもとりあえず放置。
まずは当初の目的に的を絞り、そいつをやっつけることに集中するべし。
『二兎を追う者は一兎をも得ず』だ。

「いやいやいやいや、放置したところはどうすんだよ?」

というそこの君。
簡単だ。
後からもう一つコンプを挿してやればいい。
幸いなことに、今はマシンスペックの限界が来なければいくつでもコンプを立ち上げられる時代。
だったら目的の数だけコンプを挿してやればいいのだ。

1つの目的に対して1コンプ

あまり響きの良い言葉ではないかもしれないが、コンプというものになれるまではこうしたほうが間違いなく迷走を避けられる。
慣れてきたら減らせばいいだけの話だ。
ただし、癖の強いビンテージコンプのプラグインなどはコンプを通すたびに音質が変化していくので、可能であればなるべくクリアで癖のないコンプを1つ用意しておきたい。
レベルを均整化するのはクリアなコンプ、アタックをコントロールするのはビンテージコンプなんて具合に使い分けてやれば、意図しない音質の変化を抑えながら複数の目的を達成することができる。

『初期値』と『順序』を決めるべし

コンプのパラメータというものは非常にやっかいだ。
1つのパラメータをイジる度に他のパラメータ値の見直しが必要になる。
そのため、複数のパラメータを何度も何度も調整しながら最適な値を探っていかなければならない。
これが初心者に嫌われる理由のひとつでもある。
やっとの思いで1つのパラメータを追い込んでも、他のパラメータをイジった瞬間それをぶっ壊される。
そりゃあ心がポッキリ折れるっちゅう話だ。
しかし、コンプというものに慣れてくるとこれがそんなに酷な作業でもなくなってくる。

なぜか?

自分なりのコンプをイジるときの手順が確立されるからだ。
具体的に言えば、パラメータの『初期値』と『イジる順序』が決まってくる。
そんなこと?と思うかもしれないが、これが決まっているだけで各パラメータの追い込みはかなり楽になる。
『初期値』とは自分にとっての各パラメータのスタート地点。
人によって変わってくるとは思うが、筆者の場合、

レシオ:4:1
アタックタイム:最速
リリースタイム:最速
スレッショルド:0dB

レシオとリリースタイムは目的によっては変えることもあるが、基本的にはこの設定からコンプをイジり始める。
そして『イジる順序』。
筆者の場合、

ゲインリダクションメーターを確認しながら目的に応じた圧縮量になるまでスレッショルドを下げていく。

次にアタックタイムを調整。

圧縮量が変わるので、再度スレッショルドを調整。

最後にリリースタイムを調整。

こちらも目的によって多少変わることもあるが、基本的にはこの順序でパラメータを追い込んでいく。
これらはあくまで筆者の『初期値』と『イジる順序』であって『正解』ではないわけだが、まったくもってどこからパラメータをイジっていいのかわからないという人は、まずはこの手順でイジってみるといいかもしれない。
もちろん別の手順でもいい。
とにかく自分なりの手順をなるだけ早く作ることをオススメする。
それだけでも迷走は減らせるはず。

レシオは3~4種類程度にするべし

最近はプラグイン(ソフトウェア)のコンプを使用するのが主流。
ハードのコンプとは違い、かなり細かくパラメータの値を調整できるモデルが多い。
各パラメータの値を小数点第二位まで設定できるようなモデルも少なくない。
まあ細かく調整できるということは悪いことではないのだが、ただでさえ追い込みが大変なコンプのパラメータ。
初心者にとってはただの拷問になりかねない。
なので、コンプというものになれるまでは、使用するレシオを区切りのいい整数値3~4種類に限定してしまうことをオススメする。
2:1、4:1、8:1、12:1の4つでもかまわないし3:1、6:1、12:1の3つでもかまわない。
とにかく選択肢を3~4種類程度に限定する。
これだけでも拷問を和らげることができる。
よくよく考えてみてほしい。
ハードコンプレッサーの名機であるUniversal Audioの『1176』のレシオは4:1、8:1、12:1、20:1の4種類だ。(同時押しは無視)

・・・ってことは・・・3~4種類でも十分ヤレるってことだ。

ちょいとこじつけが過ぎるかもしれないが、実際のところ選択肢がある程度限られていたほうが作業がはかどるのも事実。
まずは迷走を避けることがなによりも大事。

ゲインリダクションメーターが大事

「各パラメータの役割も理解した。
コンプを挿す目的もハッキリしているし、波形のどこを圧縮してやればいいかもわかった。
よし、オレいける!」

そう思ってコンプを立ち上げたものの、パラメータをちょこっとイジった瞬間挫折してしまう人も多い。

「パラメータの値を動かしても何がどう変化してんのかわかんねーよ。」

「ってかターゲットってどこ?見えねーんだけど。」

こんな問題にぶち当たるのだ。
そう、実際にコンプレッサーを立ち上げてみると、そこにはツマミやノブが並んでいるだけでWebや教則本で見ていたようなわかりやすい波形図はどこにもない。
つまり、波形がどのように変化するのかは実際には見えないのだ。(※最近は見れるものもある。)
波形だけじゃない。
スレッショルドの線も、アタックタイムの位置も、リリースタイムの位置も実際には見えない。

「・・・あの、僕どうしたらいいんすかね?」

という君。
安心してほしい。
今一度、立ち上げたコンプレッサーのインターフェースを見てみてほしい。
こんなものがあるはずだ。

もしくはこんなもの。

彼の名前は『ゲインリダクションメーター(GR)』。
音の圧縮量を表すメーターだ。
実はこいつの見方がわかれば、今コンプレッサーが波形のどこを圧縮しているか、スレッショルドの線やアタックタイム、リリースタイムの位置がどこにあるのかが推測できる。
多少の想像力が必要になるが、今まで数々の女友達をオカズにしてきた君のその想像力があればまず問題ないはずだ

例として、以下のような太鼓モノのトラックにコンプを挿す場合で考えてみる。
波形のピークは-6dBと仮定する。

こいつにコンプを挿して、各パラメータを筆者の初期値であるスレッショルド0、アタックタイム最速、リリースタイム最速、レシオ4:1に設定したとする。
この状態でトラックを再生した場合、GRは全く反応していないはず。
これは太鼓モノの波形にスレッショルドの線が届いていない状態であるということを表している。(※レシオが1:1より大きいことが条件)
つまりはこんな感じ。

この状態からスレッショルドの値を徐々に下げていくと、あるところからGRが反応し始める。
これすなわち、コンプが音を圧縮をしているということ。
つまり、波形のどこかにスレッショルドが掛かったということになる。

では、波形のどのあたりにスレッショルドが掛かっているのかはどうやって確認すればいいのか?
こんな感じかもしれないし、

こんな感じかもしれない。

これを見極めるにはGRの他に己の『』を使うことになる。
実際にソースを再生しながら、聴こえてくる音のどの部分でGRが反応するかを観察してやるのだ。
太鼓モノで言えば「ドォォォン」という音のどの部分でGRが反応しているかを観察してやればいい。
例えば「」の部分でメーターが反応して瞬時に0に戻る場合、これすなわちスレッショルドの線は波形の頭の山の部分のみに掛かっているということになる。

」の部分でメーターが反応し、「ォォォン」が聴こえるタイミングでもメーターが反応している場合、これすなわちスレッショルドの線が波形の余韻の部分に届くくらい深く掛かっているということになる。
つまりはこんな感じ。

こんな感じで、実際にソースを再生しながら、聞こえてくる音のどのタイミングでGRが反応するかを観察することで、スレッショルドの線の位置をある程度推測することができる。
ただしこれは、アタックタイムとリリースタイムが最速になっていることが条件になるので注意。

同様に、アタックタイムとリリースタイムの位置もGRを観察することで推測できる。
アタックタイムが最速の場合、コンプレッサーはスレッショルドを超えた瞬間、即座にレシオで設定した圧縮率で圧縮をする。
今回の例で言えば、「」が聴こえた瞬間(頭の山がスレッショルドを超えた瞬間)即座にレシオで設定した圧縮率で圧縮をする。
つまり、GRは「」が聴こえた瞬間、即座に反応する。

では、この状態からアタックタイムを徐々に遅めていってみるとどうなるのか?
アタックタイムは『レシオで設定した圧縮率までどのくらいの時間をかけて到達するかを設定するかを決めるパラメータ』。
こいつが遅くなっていくと、レシオで設定した圧縮率に到達する時間が長くなるため、圧縮量が減少する。
つまり、GRの反応が小さくなる。
アタックタイムが山のてっぺんを通り過ぎる手前にあるうちは、GRの反応がなんとなく鈍く(遅く)なったような反応になる。

ここからさらにアタックタイムを遅めていき山のてっぺんを通り過ぎるころになると、圧縮量はかなり少なくなり、圧縮のピークも山のてっぺんより後ろ側になるので、GRも明らかに「」が聴こえた後に反応するようになる。

このように、アタックタイムの位置が変わると、圧縮のタイミングと圧縮量に変化が起きる。
アタックタイム最速時における圧縮のタイミングと圧縮量が判明していることが条件にはなるが、この変化をGRで観察してやればアタックタイムの位置を推測することができるのだ。

最後にリリースタイム。
リリースタイムが最速の時、コンプレッサーはスレッショルドの値を下回った瞬間、即座に圧縮を解除する。
つまり、スレッショルドの値を下回った瞬間、即座にGRは0に戻る。
今回の例で言えば、「」が聴こえた直後にGRは0に戻る。

この状態からリリースタイムを遅めていくと、「」が聴こえた後、GRが0に戻るまでの時間がのびていく。
今回の例で言えば、「ォォォ」が聴こえるタイミングでもメーターが反応するようになっていく。
この変化を図で表すとこんな感じ。

リリースタイムは『音のレベルがスレッショルドの値を下回ったとき、どのくらいの時間をかけて圧縮を解除するかを設定するパラメータ』。
つまり、リリースタイムが長くなれば長くなるほど、圧縮を続ける時間が長くなる。
GRが0に戻るまでの時間が長くなるというわけだ。
ちなみにGRが0に戻る前に次の音がやってくる場合、それはいわゆる『コンプ掛かりっぱなし』という状態になる。

とまあこんな感じで、ソースを聴きながらゲインリダクションメーターを観察することで、各パラメータの位置がある程度推測できる。
『どのタイミングで反応するか』、『圧縮量はどう変化するか』、この情報を元に頭の中に図をイメージすることができれば、各パラメータの値を追い込みやすくなるはず。

大丈夫。

君のその想像力があればまず問題ない

今回はここまで。
次回からは実際のソースにコンプ挿していってみようと思う。

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Universal Audio APOLLO TWIN

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プラグインエフェクトと言えば「Waves」。 多くのプロも使用しているハイクオリティエフェクト。 ありきたりな選択肢だが、やはり良いものは良い。 余計な音質の変化はないし、余計な味つけもされないし、エフェクトのかかり具合も良く、使い勝手も良く、狙った効果がきちんと得られる。 CPU負荷も比較的軽めなうえ、動作も安定しているので安心して使用できる点もGood。 一昔前に比べてかなり安く手に入るようになってきているので、コスパ面でもオススメ出来る。 Silver、Gold、Platinumをはじめ多数のバンドルがラインナップされており、目的やレベルに応じて様々な選択肢をチョイスできるのも嬉しい。

audio-technica ATH-M70x

海外で人気のMシリーズのフラッグシップモデル。 決して周波数特性がフラットという機種ではないが、こいつの中高域の情報量は驚異的。 空間表現能力も驚異的でゴチャゴチャしている部分が丸見え。 他のヘッドホンで聴こえなかった音が面白いくらい見つかる。 くっついてしまったり、隠れてしまっている音もこいつなら一つ一つしっかりと確認できる。 但し、中高域が耳に張り付いてくるタイプなので、低域のモニタリングは慣れが必要? 「低域もある程度見える超高解像度版900ST」といった感じ。

YAMAHA MSP5 STUDIO

銘機「NS10M STUDIO」を開発したチームによるニアフィールドモニター「MSP STUDIO」シリーズの一番小さいサイズ。 フラットさに定評があり、モニタスピーカーとして各方面での評価も高い。 音質も非常にクリアで音像や定位もしっかりと捉えることができる。 とにかく飾り気のない素直な出音が特徴。 コスパはかなり高い。