やってきました。
今回からのお題は、いつの時代もよくわからんエフェクト部門第一位に輝き続けるミキシング初心者の天敵、コンプレッサー。
「効果がよくわからん」
「パラメータの意味がわからん」
などなど、苦手な人が多いエフェクトだったりもするが、ちゃんと理解すれば一部の耳の肥えた人間にしか使いこなせないようなすこぶる難しいエフェクトというわけでもない。
初回の今回はコンプレッサーがどんなエフェクトで具体的にどんな用途に使用されるのかを出来るだけわかりやすく説明してみようと思う。
コンプレッサーにできること
まず最初に知っておいてほしいことがある。
それは、
コンプレッサーにできることはたったのひとつしかない。
ということだ。
「音圧アップ」、「アタックの強調」、「グルーブコントロール」など、様々な目的で使用されるコンプレッサーだが、実はたった一つの機能しか搭載されていない。
ではそのたったひとつの機能とは何か?
それは「音の圧縮」だ。
ここで言う音とは音のレベルのことで、音を圧縮するということはすなわち音のレベルを小さくするということ。
つまりコンプレッサーは音のレベルを圧縮して小さくするエフェクトなわけである。
「バーカ。レベルを小さくしたいならレベルフェーダーでコントロールすればいいじゃねーか。」
「バーカ。なんであたしがあんたのごはんなんて作んなきゃなんないのよ。」
「バーカ。パパなんていらない!」
・・・まあ、各々言いたいことはあるだろうが・・・オレだって頑張って生きてるんだバカヤロウ。
さて・・・確かにレベルフェーダーを下げてやれば音のレベルは簡単に小さくすることができるのだが、コンプレッサーとレベルフェーダーにはある決定的な違いがある。
例えば以下のような波形があったとする。
仮に一番レベルの大きい1打目の部分のレベルをだけを2打目以降と同じレベル(-6dB)まで小さくしたい場合を考えてみる。
レベルフェーダーを使う場合、単純に考えればレベルを-6dB小さくしてやればいいわけだが、その場合当然それに比例して2打目以降のレベルも-6dB小さくなる。
2打目以降のレベルをそのままにしておきたい場合は、1打目の時のみレベルフェーダーを下げて2打目以降はフェーダーを元の位置に戻してやればいい。
この手法は手コンプなどども呼ばれ、どうしてもレベルの大小差が大きくなりがちなボーカルソースなどを均一に聴こえるようにするために実際に使われる手法でもある(最近はDAWも普及しているので、オートメーションでレベルを書き込んでしまうのが一般的。)。
「なんだよ!やっぱりレベルフェーダーでなんとかなるんじゃねーかよ!」
と思ったかもしれないが実はそうでもない。
こういったレベルフェーダーでの調整が出きるのはレコーディング後の話。
コンサートや生放送の場合だとしたらどうだろう?
いつどこでレベルが上下するかわからないので、未来の見える人間でない限りレベルフェーダーでのコントロールは不可能と言える。
はい困った。
で、遠い昔にどっかのオッサンAがつぶやいた。(オバサンかもしれない。)
A「あー、コンサートや生放送のときにレベルがある一定ラインよりもデカくなったら自動でレベルを小さくしてくれるような機械があれば超便利なんだけどな~。」
で、どっかの偉大なオッサンBがそのわがままに付き合ってやった。(オバサンかもしれない。)
B「しょうがねえな。じゃ、レベルがある一定以上になったら自動でレベルを抑え込む機械を作ってやるよ。」
A「マジ?オメーすげーいいヤツじゃん。」
B「そのかわりお前ん家にあった〇田〇美の裏DVD貸してね?」
こうして誕生したのがコンプレッサーである。
・・・多分。
つまりコンプレッサーは、「ある特定の場所(レベルが大きい場所)」のレベルを小さくするために作られたエフェクトなわけである。
コンプレッサーとレベルフェーダーの違い、それは特定の場所のレベルのみを小さくすることが出来るという点だ。
先ほどの例で言えば、レベルが-6dB以上になる部分だけを圧縮して小さくするということが可能になる。
コンプレッサーにできることはこれだけ。
様々な目的で使用されるコンプレッサーだが、それらは全て「特定の場所の音を圧縮する」というたった一つの機能を応用することで実現されている。
コンプレッサーの使用目的
ではコンプレッサーは具体的にどんな目的で使用されるのか?
代表的なものをいくつか挙げてみる。
・レベルのバラつきを小さくする
・音を前に出す
・音圧を稼ぐ
〇波形の加工
・音のアタック感をコントロールする
・音の余韻をコントロールする
〇音色の加工
・音質の変化を得る
〇楽曲のイメージ/グルーブのコントロール
・前ノリな感じにする
・後ノリな感じにする
レベルの大小をコントロールするエフェクトなので基本的には「音の前後」のコントロールするために使用するわけだが、実際には実に様々な用途で使用される。
そして、「音を圧縮する」や「レベルを小さくする」という言葉がどこにも出てこない点にも注目してほしい。
これがコンプレッサーが嫌われる要因のひとつだったりもするわけだが、コンプレッサーは「特定の場所のレベルを小さくする道具」ではあれど、その使用目的は「特定の場所のレベルを小さくすること」ではない場合が多い。
ちょっとややこしい話なのだが、「特定の場所のレベルを小さくする」という行為は「目的」ではなく、他の目的を達成するための間接的な「手段」になる。
どういうことか?
例えばディストーションやリバーブなどの場合、
こんな具合に目的とエフェクトの効果が直結する。
ところがコンプレッサーの場合「特定の場所のレベルを小さくすることで間接的に別の目的を達成する」という使い方をする場合が多い。
こんな感じ。
違いがわかるだろうか?
もちろん音を圧縮することで得られる音質の変化(いわゆるコンプ感)を目的として使用されることもあるのだが、これはどちらかと言えば音を圧縮した際の副作用を利用するという応用的な使い方。
基本的には「特定の場所のレベルを小さくする」ことを利用して何らかの目的を達成するという使い方になる。
逆を言ってしまえば、目的を達成するためにはどの部分をどう圧縮すればいいかがわかってしまえばコンプレッサーはそんなに難しいものでもない。
・・・・ま、極めるとなると全く別の話なんだろうが(笑)
まとめ
今回はここまで。
クソ生意気にコンプレッサーを使うコツを言わせてもらうなら、
・何の目的でコンプを使うのか。
・どこを圧縮するのか。
この2つを明確にしておくことだろう。
これらが不明確なままコンプレッサーを使おうとすると大抵の場合失敗に終わる。
特に目的。
幅広い目的で使用されるエフェクトであるが故、意外とこれを見失う人が多い。
自分が何のためにそのコンプレッサーを挿したのかを忘れないことが実はコンプレッサーを上手に使うポイントだったりする。
次回からは、コンプレッサーの各パラメータ、コンプレッサーの種類、目的別のコンプレッサーの使用方法等について解説していきたいと思う。