超初心者のためのミキシング講座/コンプレッサー編⑨【キック・スネア・タムにコンプレッサーを挿すときのポイント】

どもども。

今回からは実際のソースにコンプを挿しながら、より具体的にコンプレッサーの使い方を紹介していってみようと思う。
最初はキック・スネア・タムなどの太鼓モノにコンプレッサーを挿すときのポイントから。

太鼓モノにコンプレッサーを挿すときのポイント

まず最初に、ターゲットとなる太鼓モノの波形というものを観察してみようと思う。
ここでは代表選手としてキックの波形を観察してみる。
横軸に秒数(1ms=1/1000秒)を載せておいた。

抑えておきたいポイントは2つ。
速いアタックタイム』と『小さい余韻』。
これが太鼓モノの波形の最大の特徴。
ちなみに、ここで言うアタックタイムとはコンプのアタックタイムではなく波形のアタックタイムのことなので混同しないように。
このようなソースにコンプを挿す際はパラメータをどんな感じにしてやればいいのか?
これが重要になる。

速いアタックタイム

太鼓モノなどの打楽器というものは、波形のアタックタイムがすこぶる速い。
音の始まりからわずか7ms程度で最大地点に登りつめる。
以下の図は先ほどの波形を拡大したものだ。

で、これは太鼓モノに限った話ではないのだが、コンプレッサーというものを使う場合、コンプのアタックタイムの設定の仕方というものは大きく2つに分けられる。

ひとつ目が、コンプのアタックタイムを波形の最大地点の前に設定する方法。

もうひとつが、コンプのアタックタイムを波形の最大地点の後に設定する方法。

前者はレベルが最大地点に到達する前にレシオで設定した圧縮率に到達させてしてしまうという方法。
最大地点を積極的に圧縮したい場合に用いられる。
太鼓モノの波形は音の始まりからわずか7ms程度で最大地点に登りつめるわけだから、この方法を用いる場合コンプのアタックタイムは単純に考えて7ms以下にしてやらないといけないということになる。
さらに、コンプが圧縮を開始するのはスレッショルドを越えてから。
これを考慮すると、実際には0~2.0ms程度にしてやらないと最大地点前にレシオで設定した圧縮率に到達させることはできない。
スレッショルドの位置によっては1.0ms以下を求められることもある。

対して後者は、最大地点を極力圧縮したくない場合やナチュラルに圧縮したい場合、最大地点以降を圧縮したい場合などに用いられる方法。
太鼓ものの場合2ms~20ms程度に設定する場合が多い。
同じスレッショルドとレシオで比較した場合、前者に比べて圧縮量は少なくなるが、スレッショルドとレシオの値を変えてやればこちらもそれなりに圧縮量を稼ぐことができる。
どちらの方法が優れているかはソースの種類や目的、ジャンルなどにもよるが、目的や状況に応じてこの2つの方法を使い分けることがコンプを挿すときの重要なポイントになる。

小さい余韻

前回までにも何度か触れたが、小さい余韻部分を圧縮するためにはスレッショルドを波形にかなり深くぶち込まないと届かない。

しかし、あまり深くぶち込んでしまうと最大地点部分がぶっ潰れるし、波形のほとんどが圧縮対象となってしまうのでいわゆる『コンプ掛かりっぱなし』の状態になってしまう。
ジャンルによっては十分な圧縮量を稼ぐためにあえて深くぶち込む場合もあるが、基本的にこういったソースにコンプを挿す場合は、コンプのリリースタイムをうまく利用してやる。
リリースタイムはスレッショルドを下回る部分を圧縮できる唯一のツール
つまり、レベルがスレッショルドの値を下回った後にあえてしばらく圧縮を続けさせるわけだ。

こうすれば必要以上にスレッショルドを下げなくても上手に小さい余韻部分を圧縮できる。
どのくらい余韻を圧縮できるかは使用するコンプによってもバラつきがあったりするので、手元に複数のコンプがある人はいろんなモデルを試してみると機種ごとの傾向が掴めてくると思う。
ちなみに先ほど紹介した2つの方法(アタックタイムを最大地点の前に設定するか後に設定するか)の場合、比較的後者の方が余韻部分をより圧縮しやすい。
なので、波形の余韻部分を強めに圧縮する必要がある場合は後者を選んだほうが設定を追い込みやすいと思う。
前者を選択する場合は、ある程度ピーク(最大地点)をぶっ潰す覚悟でスレッショルドを深くするか、リリースタイムで余韻を潰しやすいコンプを使うことをオススメする。

と、こんな感じ。

スネアのレベルの大小差を小さくしてみる

では、前述のポイントを踏まえて実際のソースにコンプを挿していってみようと思う。
まずはソースのレベルの大小差を小さくする処理から。
ここではスネアを例に紹介するが、キックやタムなど太鼓モノ全般に応用できるので試してみてほしい。
ではでは。
最初の一例目なのでちょっとねちっこく解説する。
まずはサンプルを聴いてみる。
波形はこんな感じ。

レベルの大きい部分と小さい部分の差に注目してほしい。
この音量差があってこそ生ドラムなわけだが、レベルの大きい部分を基準にしてトラックの音量を調整すると、レベルの小さい部分がギターやボーカルなどのウワモノにかき消されてしまったりする。
そこで、これらの音量差を小さくすることでソースの前後の位置を安定させてやる。
圧縮のターゲットはレベルの大きい赤マーク部分。

ここを圧縮してレベルの大小差を小さくする。
まずは筆者の初期値であるレシオ4:1、アタックタイム:最速、リリースタイム:最速の状態で圧縮対象である赤マル部分にかかるようにスレッショルドを下げていってみる。
目標とするゲインリダクション(GR)はピーク部分で5~7dB程度でいいと思う。
で、このとき圧縮対象ではないゴースト気味に鳴っている部分でもGRが反応してしまっても問題ない
むしろ1~2dB程度圧縮されている状態が好ましい。
ここは本来圧縮対象ではないのだが、全ての波形を圧縮することで質感の統一を図ることができる。
レベルの大小差を小さくするという目的は多少弱くなることにはなるのだが、こちらの方が仕上がりが不自然じゃなくなる。
なので、

「ゴースト部分にスレッショルドが掛かっちまうからちょっとしかスレッショルドを下げられねえよ。」

といった心配はしなくても大丈夫。
とはいっても、逆にゴースト部分にスレッショルドが届いていないからとスレッショルドを過度に下げるのは危険。
ゴースト部分のレベルがかなり小さい場合もあるので、ピークでの圧縮量を5~7dB程度にしたときにゴースト部分にスレッショルドが掛かっていたらラッキー程度に思っておけばいいと思う。

また、前回までにも解説したがコンプレッサーをイジるときは「スレッショルドの値をいくつに設定・・・」という考えは捨てること
大事なのはGR
スレッショルドを下げながら確認するのはGRメーターの値だということを忘れずに。
WavesのR-Compなんかはスレッショルドの値が0dBでも-3dB以上の音を圧縮するという仕様だったりするので、スレッショルドの値ってのはホント気にしないほうがいい。
ということで、耳で音を聴きながら圧縮対象部分のピークでGRメーターが7dB程度になるあたりまで下げていってみる。
ここでは『Waves C1』で最大地点を7dB程度潰してみる。
するとこんな感じになる。
波形は以下のように変化。

聴いた感じのどうこうはとりあえず置いておいて、レベルの小さいところ(余韻部分やレベルの小さい波形)はそのままにレベルの大きいところ(最大地点)の音量がコンプ挿入前と比べて小さくなっているのがわかると思う。

「いや・・・音が小さくなっちまったじゃねーか。」

と思ったそこの君。
大丈夫。
これでいい。
レベルのデカいところを圧縮したんだから小さく聴こえて当然。
後で元の音量まで戻すので安心して次に進んでほしい。

次に、とりあえず置いておいた『聴いた感じのどうこう』を各パラメータを調整して解決していく。
最初はアタックタイム。
圧縮対象部分のド頭、すなわち『速いアタックタイム』の部分に意識を集中させる。
現状、アタックタイムは最速。
これは最大地点を迎える前にレシオで設定した圧縮率に到達させる最も効率よく圧縮量が稼げる設定。
しかし、この設定はソースのアタック部分(最大地点)を容赦なくぶっ潰すため音楽的に崩壊しやすい設定でもある。
また、アタック部分(最大地点)を圧縮するということはその後の余韻部分との音量差を小さくするということでもあるので、結果的にソースのアタック感を弱めるということになる。
後に出力レベルを上げることでアタック感を強めることもできるのだが、こういったソースをオケの中に突っ込むとどうしてもベタッとヘタレた何ともパンチのない音に聴こえてしまう傾向がある。
この対策として、余韻部分も同時に圧縮することでアタック感を回復させたりするのだが、こうして作った音はどうしてもコンプ感が強めになる。
なので、なるべくナチュラルに仕上げたいという場合は波形の最大地点をあらかじめある程度残し(アタックタイムを最大地点の後に設定)、積極的にコンプ感のある音に仕上げたい場合やレベルの大小差がかなりデカい場合には最大地点もガッツリ圧縮する(アタックタイムを最大地点の前、もしくはかなり速めに設定)ようにしてやるといい。
今回は、ほどほどに最大地点を残しつつも十分な圧縮量を稼げる値を探してみる。
方法は至ってシンプル。
コンプのアタックタイムを最速の状態から徐々に遅めていき、最大地点の山を適度に残しつつ圧縮量も稼げるポイントを探っていってやる。
多少慣れは必要だが、ゲインリダクションメーターを確認しながらアタックタイムをゆぅっっっくりと遅めていくと、コンプのアタックタイムがソースのアタック部分を昇っている感覚やピーク(最大地点)を超えた瞬間の感覚が掴めるようになってくる。

この感覚が大事

己の耳を研ぎ澄まし、狙った通りの聴こえかたで圧縮量が稼げるところを探し出してみてほしい。
ちなみに、太鼓モノの場合アタックタイムを遅くしていくとあっという間に最大地点を通り過ぎる(1.0~2.0ms程度)。
とにかく圧縮量を稼ぎたい(レベルの大小差が大きい)場合は、最大地点に昇りつめていく途中(0.2~0.8ms程度)を狙ってやるといい(ひっかけるなんて言われる)。
逆にナチュラルにアタック感を残したいのであれば最大地点の直後(2.0~10ms程度)あたりを狙うと良いと思う。
で、当然の話だがアタックタイムを遅めていくと稼げる圧縮量はどんどん小さくなっていく。
なので、アタックタイムを調整 → 再度スレッショルドを下げて圧縮量を調整を繰り返して音楽的にもGoodで圧縮量を稼げるラインを探し出す。
ここではアタックタイムを2msに設定してみた。
ゲインリダクションは7dBになるように再調整。
聴いてみる。
波形は以下のように変化。

最大地点が若干回復しているのがわかると思う。

さて、アタックタイムの調整が終わったら、コンプレッサーの出力レベル(OUTPUT GAIN)、もしくはトラックのレベルフェーダーを持ち上げて、圧縮したことで小さくなってしまった音量をコンプ挿入前と同じくらいまで戻してやる。
このとき、間違ってもインプットレベルはいじらないこと
今までの設定がオシャカになる。
レベルを持ち上げたいのはコンプ挿入後のレベル。
すなわちコンプレッサーの出力レベル(OUTPUT GAIN)、もしくはトラックのレベルフェーダーを使う。
これでコンプで圧縮した後の波形をそのままにレベルをコントロールすることができる。
ちなみに、この処理は音が小さくなったままでも良い場合は別にやらなくてもいい。
他のソースとの兼ね合いを見て元の大きさまで戻す必要があると思った場合のみ出力レベルを上げてやればいい。
ここではコンプの出力レベルを上げていき、ピークがコンプ挿入前と大体同じ音量になるように調整してみる。
するとこんな感じになる。
波形は以下のように変化。

ピークはコンプ挿入前とほぼ同じ位置だが、レベルの小さいところ(余韻部分やレベルの小さい波形)がコンプ挿入前よりも大きくなっているのがわかると思う。
もっと音量差を小さくしたいという場合は、アタックタイムを最大地点の前に持ってきたり、レシオの値を上げていけばいい。
ただし、どんどんコンプ感は強くなっていくのでナチュラルに仕上げたい場合はやりすぎに注意。

仕上げはリリースタイム。
今度は『小さい余韻部分』に意識を集中させる。
基本的にはリリースタイムを遅くすればするほど余韻部分を圧縮する時間が長くなる。
こいつで余韻の聴こえ具合を調整してやる。
前述のとおり、最大地点を圧縮して出力レベルを持ち上げると余韻部分も大きく聴こえるようになる。
で、太鼓モノの余韻部分というものには空気感(部屋鳴りの天然リバーブ成分)がたらふく含まれているので、最大地点を圧縮して出力レベルを持ち上げるとソースの聴いた感じの距離感に変化が起きる
この変化をそのままにしておきたい場合やそもそも出力レベルを持ち上げない場合などは、余韻部分を極力圧縮しないように速めに設定してやればいい。
ただし、この場合アタック感はどうしても弱めになるということは覚えておいたほうがいい。
ピンで聴くとなんら問題なさそうでも、オケに混ぜるとびっくりするくらいベタついて聴こえたりするので注意してほしい。
今回の例ではアタックタイムを2.0msに設定しているのである程度最大地点が残っているが、速いアタックタイムで最大地点をぶっ潰すような場合はリリースタイムを使って余韻部分を程よく圧縮してアタック感を強調させたほうがいいと思う。
いろいろ言ってもアレなので実際にやってみる。
まずは、不自然な圧縮解除にならない且つなるだけ早く解除できるポイントを探る。
具体的に言えば、太鼓モノの場合10ms~40ms程度だろうか?
ここではリリースタイムを20msに設定してみた。
聴いてみる。
波形は以下のように変化。

次に、余韻を小さくする場合。
好みのアタック感や余韻の聴こえ方になるまでリリースタイムを遅めていく。
ちなみに、リリースタイムは曲のグルーヴ感にも影響を与えたりするので、実際のミキシングではピンでの調整をある程度済ませたらオケに混ぜて最終調整をすることをオススメする。
また、あまりリリースタイムを遅くしすぎると次の音まで圧縮が続いてしまい、いわゆるコンプ掛かりっぱなしの状態になってしまうので注意。
次の音までの距離(時間)は楽曲やフレーズによって異なるので、具体的に○ms以上にすると掛かりっぱなしになるとは言えないが、これ以上大きい値は明らかにコンプ掛かりっぱなしになるというおおよその値は把握できる。
例えばBPM120の曲の場合、4分音符一拍の長さは0.5秒(500ms)。(※60秒÷120=0.5、BPMが180なら60秒÷180=0.33・・)
四つ打ちのキックであれば、ターゲットの音がなってから500ms後には次の音がやってくる。
ということは、単純に考えてリリースタイムが500ms以上になれば確実にコンプ掛かりっぱなしになる。
8分音符であればその半分、つまり250ms以上、16分音符であればさらに半分、125ms以上でコンプ掛かりっぱになる。
まあ実際にはリリースタイムのスタート地点は波形がスレッショルドの値を下回った瞬間なので、もうちょい早いタイミングでコンプ掛かりっぱなしになるわけだが、全くもってリリースタイムをいくつに設定していいかわからないという人はこうやって考えてみれば、明らかに遅すぎる値に調整してしまうということは防げるので覚えておくといい。
それから、

「なんとしてもこの余韻をコンプで潰してやる!」

と変なスイッチが入ってしまうと、そもそもの目的を見失ってしまったりするので注意。
レベルの大小差を大きくしたのだから余韻部分が大きくなるのは当然。
特に薄~く長~く伸びている余韻の後半部分は、無理に潰そうとすると必ず副作用が大きくなる。
コンプで圧縮できる余韻の大きさにはある程度の限界がある。
まずはオケに混ぜて聴いてみて、本当にそこまで潰す必要があるのかを落ち着いて判断してみてほしい。

「あれ?別に消さなくてもいいのかも」

と、我に返ることも多い。
初心者あるあるだ。
どうしても余韻をやっつけたいという場合も、EQや他のエフェクトを併用して余韻を調整することもできるので、あまり躍起にならないほうがいい。
ここではリリースタイムを80msに設定してみた。
聴いてみる。
波形は以下のように変化。

リリースタイムを20msに設定したときよりも余韻部分の音量が小さくなっているのが確認できると思う。
聴いた感じのアタック感もより強調されている。
オケに混ぜるとわかりやすいのだが・・・めんどくさいので割愛(オイ)

最後にコンプ挿入前と聴き比べ。

レシオ:4:1
アタックタイム:2.0ms
リリースタイム:20ms
ゲインリダクション:7.0dB程度

【コンプ挿入前】
【コンプ挿入後】

レシオ:4:1
アタックタイム:2.0ms
リリースタイム:80ms
ゲインリダクション:9.0dB程度

【コンプ挿入前】
【コンプ挿入後】

スネアの音を前に出す

お次はソース全体の音像を前に出すためのコンプの使い方。
こちらも前項同様スネアを例にご紹介。
やることは、

音のレベルの大小差を小さくして・・・・出力レベルをあげる。

・・・そう、さっきと変わらない。
ただ、目的が目的なので今度はコンプのアタックタイムを最大地点の前に設定して、ちょっと大げさにレベルの大小差を詰めて処理してみる。
まずは先ほど同様、筆者の初期値であるアタックタイム:最速、リリースタイム:最速の状態でスレッショルドを下げていく。
目標とする圧縮量は7~10dB程度。
するとこんな感じになる。
波形の変化は以下のような感じ。

先程より強めに圧縮しているので、より最大地点の音が潰されているのがわかると思う。

続いてアタックタイム。
今回はとにかく圧縮量を稼ぎたいので、アタックタイムを最大地点の前に設定してみる。
最大地点に昇りつめていく途中(0.2~0.8ms程度)を狙ってやる感覚。
ここでは0.2msに設定してみた。
聴いてみる。
波形は以下のように変化。

したらば、全体を前に持ってくるためにコンプレッサーの出力レベル(OUTPUT GAIN)、もしくはトラックのレベルフェーダーを狙った位置で聴こえてくるまで持ち上げる。
このとき、コンプ挿入前の出力レベルを超えないように注意
コンプ挿入前の出力レベルに到達した時点で「もっと前に出したい」と感じる場合は圧縮量を増やして再トライ。
意図的にコンプ挿入前の出力レベルをオーバーさせる場合もあるのだが、コンプの使い方にある程度慣れるまではやめておいたほうがいいと思う。
聴いてみる。
波形は以下のように変化。

ググッと前に出て聴こえるようになったはず。

仕上げはリリースタイム。
前述のとおり、最大地点をぶっ潰した場合はある程度余韻部分を圧縮してアタック感を取り戻しておいたほうがいい。
ここでは40msに設定。
波形は以下のように変化。

正直ここまで出力レベルを持ち上げた場合、余韻部分の音量もかなり大きくなってくるので、コンプのリリースタイムのみで余韻部分を十分に小さくするのは結構難しくなる。
リリースタイムを調整してもヘタレ具合が改善されない場合は、コンプ挿入後にEQを挿して気になる部分をを削る、アタック成分を持ち上げるなどの処理をしてやることをオススメする。
ちなみに、コンプでどこかを圧縮した場合、周波数帯域ごとの音量バランスに変化が起きるのでソースの聴こえ方には必ず変化が起きる。
この変化が気になる場合もEQを挿して各周波数帯域の音量バランスを補正した方が良いと思う。

最後にコンプ挿入前と聴き比べ。

レシオ:4:1
アタックタイム:0.2ms
リリースタイム:40ms
ゲインリダクション:10dB程度

【コンプ挿入前】
【コンプ挿入後】

強めに圧縮を掛けた分、さっきよりもレベルの小さいところ(余韻部分やレベルの小さい波形)がより大きく聴こえるようになっているのもわかると思う。
個人的にはちょいとヤリ過ぎだと感じる設定。

キックの余韻を小さくしてみる

お次は太鼓モノの余韻を小さくしたい場合の処理。
前項で『コンプで圧縮できる余韻の大きさには限界がある』と言ったが、あえて強力に余韻を潰したい場合の設定例を紹介しておく。
ここでは生ドラムのキックを例に紹介するが、基本生ドラムにはあまりオススメしない。
ちなみに、逆に余韻を大きくしたい場合は『レベルの大小差を小さくしてみる』の内容を参考にしてもらえばOK。
レベルの大きいところ(最大地点)を圧縮して出力レベルを持ち上げた時に、レベルの小さいところ(余韻部分)が大きく聴こえるようになった現象を利用してやればいい。
ただし、大きく聴こえるようになった余韻部分を無駄に圧縮してしまわないようにする必要があるので、リリースタイムは速めに設定してやった方がいい。

ではでは。
まずはサンプルを聴いてみる。
波形はこんな感じ。

圧縮のターゲットのメインは余韻部分。

先程と同様に、とりあえずアタックタイム&リリースタイムを最速、レシオ4:1に設定してスレッショルドを下げていってみる。

「・・・ちょっとまて。圧縮のターゲットは余韻部分だろ?最大地点潰してどうすんだよ?」

と思ったそこの君。

エロいね。

そのとおり。
そのとおりなのだが、適正なパラメータの値を探ってやるためには必要な処理なのでとりあえずそのまま進んでみてほしい。
GRの数値は気にせず、余韻部分の前半部分が十分に小さくなるまでぶち込む。
何とも説明が難しいのだが、ソースの音を聴きながらGRの動きを観察して、「ドォォォン」という音の「ドォ」くらいまでGRが反応するライン。
するとこんな感じになる。
波形は以下のように変化。

最大地点が思いっきりぶっ潰れているのでなんとも聴くに耐えない状態だがこれでOK。
したらば、リリースタイムを徐々に遅めていき、余韻の後半部分「ォォン」の部分が十分に小さくなるまで遅くする。
スレッショルドが深めになってると思うので以外と速めでも潰せる思う。
ただし、次の音に掛かってしまうラインまで遅くしても、満足するラインまで余韻を圧縮できない場合は、スレッショルドを深めるかEQなどの他のエフェクトを併用してみるといい。
ここでは30msに設定してみた。
聴いてみる。
波形は以下のように変化。

したらば、アタックタイムを最大地点がひょっこり顔を出すあたりまで遅くする。
狙うのは最大地点の後。
今回の真のターゲットは余韻部分。
最大地点を必要以上に圧縮する必要はない。
イメージとしては、最大地点はほんの少しだけ圧縮されているけどほとんど圧縮されていないレベルで、最大地点の後から本格的に圧縮が始まってますよみたいな感じ。
具体的には20~30ms程度になると思う。
ここでは20msに設定してみた。
するとこんな感じになる。
波形は以下のように変化。

ここまできたら圧縮によって多少下がったレベルを元に戻してやる。
聴いてみる。
波形は以下のように変化。

余韻が小さくなってタイトな仕上がりになったのがわかると思う。
よぉぉぉく聴くと薄くて長い余韻が残っているのだが、オケに混ぜても気になるようであればEQや他のエフェクトで処理してやる。
気にならなければ・・・もちろん放置。
最後にコンプ挿入前と聴き比べ。

レシオ:4:1
アタックタイム:20ms
リリースタイム:30ms
ゲインリダクション:9dB程度

【コンプ挿入前】
【コンプ挿入後】

最大地点はほとんどそのまま、最大地点以降の余韻部分が小さくなっていることが確認できる。

アタック感を強調してみる

お次はアタック感の強調。
前項までにも解説したが、アタック感を強調する方法は、

・最大地点を圧縮して出力レベルを上げる。(最大地点付近の音を持ち上げる)
・余韻部分を圧縮して最大地点との音量差を大きくする

この2つ。
ここではこの両方でキックのアタック感を強調してみる。
圧縮のターゲットは最大地点と余韻部分。

「なぜに最大地点も?」という人は、こちらの記事を読んでみてほしい。
まずは例のごとく、アタックタイム&リリースタイムを最速に設定してゲインリダクションが最大地点で7~10dB程度になるようにスレッショルドを下げていく。
したらば、コンプのアタックタイムを最速の状態から徐々に遅めていき、アタック感が死んでしまわない(音楽的に壊滅しない)且つ、圧縮量も稼げるポイントを探ってやる。
この辺りは前項の『音を前に出す』の手順と一緒。
ここではアタックタイムを2msに設定してみた。
聴いてみる。
波形は以下のように変化。

したらば、コンプレッサーの出力レベル(OUTPUT GAIN)、もしくはトラックのレベルフェーダーを持ち上げて、圧縮したことで小さくなったレベルの最大地点をコンプ挿入前の最大地点のラインまで持ち上げてやる。
するとこんな感じになる。
波形は以下のように変化。

仕上げはリリースタイム。
例のごとくアタック感が強調して聴こえるように余韻部分を適度に圧縮。
ここでは80msに設定してみた。
波形は以下のように変化。

最後にコンプ挿入前と聴き比べ。

レシオ:4:1
アタックタイム:2ms
リリースタイム:80ms
ゲインリダクション:10dB程度

【コンプ挿入前】
【コンプ挿入後】

ちなみに、アタックタイムをもっと速めればさらに最大地点付近の音を持ち上げることもできる。
試しにアタックタイムを0.2msにして出力レベルを可能な限り持ち上げてみる。
リリースタイムは60msに設定。

レシオ:4:1
アタックタイム:0.2ms
リリースタイム:60ms
ゲインリダクション:10dB程度

【コンプ挿入前】
【コンプ挿入後】

非常にパワフルに聴こえるが、ここまでやると前項の『音を前に出す』のときと同様、コンプのリリースタイムのみで余韻部分を十分に小さくするのは難しい。
どうしてもオケの中でヘタレるようであれば、コンプ挿入後にEQを挿して余韻部分を削る、アタック成分を持ち上げるなど、各周波数帯域の音量バランスを補正してやる。

まとめ

いかがだっただろうか?

今回は、波形がどのように変化していくかの図も載せておいたので、比較的効果がわかりやすかったのではないだろうか?
しかしご存知のとおり、実際は波形の変化を目で確認することはできない(※最近はできるものある)。
さらにはアタックタイムやリリースタイム、スレッショルドの位置も見えない。
前回説明した通り、ソースの音を耳で聴きながらゲインリダクションメーターの動きを観察することで、これらの位置や『今、波形にどんな変化が起きているのか』を想像することになる。
これがまあ簡単とは言えないわけだが・・・前回言ったとおり今まで数々の女性をオカズにしてきた君のその想像力があればまず問題ないはずだ

・・・良かったじゃないか。

今までの経験がまさかこんなところで役に立つなんて

また、最近のプラグインは小数点第二位と非常に細かく値を設定できるものが多いが、慣れるまではアタックタイムは整数もしくは0.5ms単位、リリースタイムは0~200msまでは10ms単位、200ms以上は50~100ms単位くらいでイジるようにした方がいいと思う。
選択肢が多すぎるのは初心者にとってはただの拷問。
ある程度選択肢を絞ったほうがコツをつかみやすいと思う。

次回は、オーバーヘッドマイクにコンプを挿す際のポイントを紹介してみようと思う。

ではでは。

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Universal Audio APOLLO TWIN

Universal Audioは1176や610などの名機と呼ばれるアウトボードを生み出しているアメリカの老舗プロフェッショナルオーディオ機器ブランド。 Apollo Twin は同社のハイクオリティDSPプラグイン「UAD-2」が利用できるDSPチップを搭載したコンパクトオーディオインターフェース。 「往年のアナログ機器のサウンドをプラグインで再現」というコンセプトのもとに開発されるUAD-2は、NEVE 1073、610、APIやSSL、1176、LA-2A、Pultec EQなど数々の名機をプラグイン化しており、その技術は世界中で非常に高い評価を得ている。 プロの定番プラグインであるWavesを始め、様々なブランドが名機のエミュレートプラグインをリリースしているが、ビンテージ機材のエミュレーション技術においては間違いなくUniversal Audioが群を抜いている。 最近ではMarshallやFender、Ampegのアンプシミュレーターなどもリリースしており、ギタリストやベーシストにもオススメ。 手にしたその日からワンランク上のレコーディング、ミキシング環境が手に入る。

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銘機「NS10M STUDIO」を開発したチームによるニアフィールドモニター「MSP STUDIO」シリーズの一番小さいサイズ。 フラットさに定評があり、モニタスピーカーとして各方面での評価も高い。 音質も非常にクリアで音像や定位もしっかりと捉えることができる。 とにかく飾り気のない素直な出音が特徴。 コスパはかなり高い。