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超初心者のためのミキシング講座/コンプレッサー編③【レベルの大小差を小さくする】

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どもども。

今回からは目的別にコンプレッサーの具体的な使用方法を解説していきたいと思う。
最初のお題はレベルの大小差を小さくすることを目的とした場合のコンプレッサーの使い方。

なぜレベルの大小差を小さくするのか?

よく「レベルの大小差を小さくして均等にする(聴きやすくする)」という言葉を見かけると思うが、なぜそんなことをしなければならないのか?
そもそもボーカルや生楽器をレコーディングした場合、最初から最後までずっとレベルが一定ということなんてあり得ない。
常に一定のレベルで歌い続けることができる超人なんてこの世の中に存在しないし、人間の声は発音する文字や単語によっても微妙にレベルが変化する。
それに、ボーカリストや演奏者は感情を織り交ぜながら抑えるところは抑える、声を張るところは張るといった具合に抑揚をつけて演奏する。
音の強弱(レベルの大小差)は生モノにとって必要不可欠なものでもあるはずだ。
この音の強弱のことを音楽の世界ではダイナミクス、その強弱の幅(音の大小差の広さ)のことをダイナミクスレンジと呼び、このレンジの広さがボーカルや生楽器の最大のセールスポイントであり、いわゆる「音楽的」に大事な要素となっている。
では何故そのセールスポイントをぶっ潰してしまうような処理をする必要があるのか?
それは音の前後の配置に関係してくる。
以前の記事でも解説したが、レベルの大小というものは音の前後をコントロールする要素。
例えば以下のような空間を構築したい場合、

名称未設定 2.001

各ソースのレベルに差をつけることで音の前後をコントロールする。
レベルが大きいほど音像は前に、小さいほど音像は奥に移動する。

名称未設定 2.002

ダイナミクスレンジというものを考慮した場合、各ソースのレベルは以下のような範囲で変動することになる。
ここでは例としてボーカルとギターのみに説明を絞らせてもらう。

名称未設定 2.003

レベルが変動するということは前後関係が変化するということ。
つまり、楽曲の途中で一番手前に配置したいボーカルが曲の途中でドラムの後ろに移動してしまったりという現象が起きてしまうわけだ。

名称未設定 2.004

こりゃ困る。
ということでミキシングをする場合、各ソースの前後の配置を安定させるために各ソースのダイナミクスレンジ(レベルの幅)を限定させてやる必要が出てくる。
イメージとしては下図のような感じ。

dd.001

そもそも各ソースというものは、ボーカルやアンプ、太鼓の目の前にセットされたマイクで拾ってレコーディングされている。
こちらが作りたい空間に適したダイナミクスレンジになどなっていない。
これを自分がリスナーに聴かせたい空間に合わせてやるということだ。

どこを圧縮すればいい?

では、この目的を果たすためにはコンプレッサーでどこを圧縮してやればいいのかを考えてみる。
例えば以下のような波形。

ds.001

1打目と2打目以降にレベルの差がある。
このレベル差を小さくしたい場合どこを圧縮したらいいだろう?
簡単だ。
以下の図の赤マル部分を圧縮してやればレベルの大小差を小さくすることができる。

fd.001

・・・が、今回のような目的の場合、結果的に以下の図のように圧縮したい部分以外も圧縮の対象になるのが一般的。

fd.002

これにはいくつか理由があるのだが、その辺については各パラメータの設定の解説と一緒に説明したいと思う。
いずれにしても、メインのターゲットは最初の図の赤マル部分であることには変わりはないので現段階では一旦忘れておいてほしい。

パラメータの設定

では、赤マル部分を圧縮するためにはコンプレッサーの各パラメータをどう設定したらいいかを解説していく。

レシオ

手っ取り早く具体的な数値を教えてほしいという人も多いかと思うので、最初に推奨値を書いておく。

レシオ推奨値 ・・・ 2:1~8:1

コンプレッサーを使ったことのない人は「レベルの大小差を小さくしたいならレシオをInf(無限大):1にしてベタッと潰してやればいいじゃん。」と思うかもしれない。
確かにその通り。
以下の図のように、圧縮比率(レシオ)を無限大にデカくしてやればコンプレッサーはスレッショルドを超えた音を限りなく小さく抑え込む。

ds.003

しかし、実際に試してもらうとわかるが、このような設定にすると非常にイケてない状態になる。
というのも、コンプレッサーで音を圧縮すると音質の変化を伴う。
そしてその変化はレシオの値が大きければ大きいほど比例して大きくなる。
軽~く1~2dB程度圧縮する場合であればこのような設定でもOKなのだが、今回の目的の場合それなりに音を潰してやらないとレベルの大小差は小さくできない。
レシオの値を極端に大きくしてそれなりに潰そうとすると、音質の変化が酷くて聴けたもんじゃなくなってしまうのだ。
今回の目的に一番合ってそうで、実は一番合っていない設定というわけだ。
このような設定は過度に大きい信号が入ってきたときに是が非でもレベルを抑え込むようなリミッター向けの設定と言える。
ボーカルや生楽器のように、極力自然な感じ且つダイナミクスを殺さずにレベル差を小さくしたいという場合、レシオは2:1~8:1程度の範囲にしたほうがいいだろう。

ds.004

スレッショルド

ゲインリダクション推奨値 ・・・ ~7dB程度

今回の目的に限った話ではないのだが、コンプレッサーを使う場合は「スレッショルドは何dBにしたらいいか?」という考え方は捨てたほうがいい
なぜならスレッショルドの値というものはソースが入力されるレベルによって変動するものだからだ。
重要なのは「スレッショルドは何dBにしたらいいか?」ではなく「どのくらいレベルを圧縮するか?」。
すなわち「圧縮量を何dBにしてやるか?」だ。
つまり、気にしなければならないのはスレッショルドの値ではなくゲインリダクションメーターなのだ。
スレッショルドを設定するときは「圧縮量」と「音質の変化」を確認しながら適正な値を探っていくことになる。
今回のような目的の場合であれば、ゲインリダクションが大きいところ(要は最初に出てきた赤マル部分)で5dB〜7dB程度になるように設定してやるといいと思う。
で、一般的なボーカルや生楽器のソースでこの圧縮量に到達させようとすると、圧縮したい部分以外にもスレッショルドが届いてしまっている状態になると思う。
イメージとしては以下のような感じ。

ds.005

縮められるレベル差が小さくなってしまうので一見イケてない設定かのように思えるが、実はこれが一番仕上がりが自然で効率のいい設定と言える

ここでちょっとした小ネタを。
実は、コンプレッサーは機種によってはスレッショルドの値と実際に圧縮を開始するレベルに差が設けられている場合がある。
っというかメジャーなコンプレッサーのほとんどがそのタイプだ(笑)
例えばWavesのR-Comp(Renaissance Compressor)はスレッショルド値と実際にコンプレッサーが動作するレベルに3dBの差がある。
つまり、スレッショルドの値を0dBに設定したとしても、実際には-3dB以上の音を圧縮しているということだ。

s.001

・・・・・・えーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?
っと思うだろうがこれは各コンプレッサーの仕様によるもの。
そういうものだと割り切ってもらうしかない。
まあ、そんな理由からもスレッショルドはスレッショルドの値ではなく、ゲインリダクションを確認しながら設定してやる必要があるということを覚えておいてもらいたい。