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超初心者のためのミキシング講座/コンプレッサー編⑦【サイドチェイン】

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どもども。

今回は番外編ということで、「サイドチェインによるダッキング」について解説してみたいと思う。

サイドチェインとは?

サイドチェインとは、エフェクトのON/OFFや掛かり具合などといった動作条件(トリガー)をエフェクトを掛けたいトラックとは別のトラックで設定する手法のこと。
代表的なのが、キックの音量をトリガーにしてベースの音量を圧縮するというダッキングと呼ばれる手法。
その様がボクシングのパンチを避けるテクニックである「ダッキング」のようだということからこんな名前が付いたらしい。
主にクラブミュージックで多用される手法だが、POPやバンドモノなどのミキシングでもたまに使われる手法でもある。
一昔前は、キックが鳴るタイミングだけベースの音量を抑え込むという目的で使用されていたのだが、最近はかなり極端にベースやウワモノ全体を圧縮して、それによって得られる独特なノリを得るために使われる手法に変貌を遂げていたりもするので覚えておきたい。
ちなみにダッキングと呼ぶのは我々オッサン世代だけのようで、最近ではダッキング=サイドチェインと呼ばれているようだ。

「・・・言ってることがよくわからん。」

という人の為にサンプルを用意した。
EDMっぽい曲を作ってキックをトリガーにベースとウワモノをダッキングしてみたので聴いてみてほしい(コンプレッサーはWavesのC1を使用)。

こんな感じ。
免疫のない人は強烈な違和感を感じると思うが、こんなのが流行っているジャンルもある。
ちなみにサイドチェインのコンプレッサーをOFFにするとこんな感じ。

・・・まあこれはダッキングありでミックスした後にコンプをOFFにしただけの状態なのでバランスが悪いのはご愛嬌。
しかしウソのようなホントの話だが前者と後者、キックのレベルは全く同じ
にもかかわらず、間違いなく前者の方が4つ打ちのキックがハッキリ聴こえると思う。
キックに重なっていたベースとウワモノが無くなるだけでこんなにも聴こえ方が違う。

サイドチェインの準備

サイドチェインの設定方法は各DAWによって様々。
各DAWでの設定方法については各自ググってみてほしい。
EDMやサイドチェイン自体がここ数年ブームだったのであっさりヒットすると思う。
ここでは筆者の環境で申し訳ないがLogicでの手順を紹介させてもらう。

1.圧縮したいトラックにサイドチェインに対応したコンプレッサーを挿入。
  ここではベースにWavesのR-Compを挿入。

2.エフェクトGUIの「サイドチェーン」から動作条件にしたいトラックを選択。
  ここではキックのトラックを選択。

これで準備OK。
もしも、ベース以外のトラックも圧縮の対象にしたい場合は、圧縮したい程度別にBusでまとめてそれぞれにコンプレッサーを挿入してやればいい。
筆者の場合は「ベース」、「パッド」、「リード」の3つに分ける場合が多い。

また、キックが実際に鳴っていないところでも圧縮効果を得たいという場合は、

1.実際には音を出さないゴーストキックトラック(隠れキックトラック)を作成して、ダッキングの効果を得たい箇所にキックの波形を貼り付ける
  トラックを作成してキックの波形を貼り付け。

2.ゴーストキックトラックの信号を任意のBusチャンネルに送る
  ゴーストキックトラックのSendsボタンを長押しして、表示されるタブから任意のBusチャンネルを選択。
 これで自動的にBusチャンネルも作成される。
 センド量は「0dB」に設定。

3.Busに送る信号をプリフェーダー信号に切り替える
  再度Sendsボタンを長押しすると、「ポストパン」「ポストフェーダー」「プリフェーダー」を選択するタブが表示されるので「プリフェーダー」を選択。
 これでゴーストキックトラックのレベルフェーダーの位置にかかわらずBusに信号を送れるようになる。


4.圧縮したいトラックに挿入したコンプレッサーの「サイドチェーン」タグから信号を送ったBusを選択

これでOK。
ゴーストキックトラックと信号を送ったBusのレベルフェーダーを-INFまで下げるのを忘れずに。
ちなみに筆者の場合、キックの鳴る鳴らないにかかわらずサイドチェイン用のゴーストキックトラックを作成している。
理由は後程。

どこを圧縮すればいい?

今までとはちょっと勝手は違うが結局やることは一緒。
音の圧縮。
キックが鳴るタイミングでベース&ウワモノを圧縮してやりたいわけだ。
キックが鳴るタイミングで、

ベース&ウワモノを、

圧縮。

キックの鳴るタイミングでベース&ウワモノの波形に穴を掘ってやるイメージ。
この穴をどんな形に掘るかで楽曲のイメージやグルーブ(ノリ)が激しく変化するので、各パラメータをコントロールして穴の形を決めていってやる。

各パラメータの設定

では、コンプレッサーの各パラメータが穴の形のどこをコントロールすることになるのかを見てみる。
まずはアタック・タイムとリリース・タイム。

こんな感じ。
アタック・タイムは穴の掘り始めの傾斜各度。
傾斜角度がキツければキツいほど(アタック・タイムが速ければ速いほど)素早く穴の最深部(最大圧縮量)に到達する。
ダッキングの場合、キックのアタック部分が鳴るタイミングには音の圧縮を全開にしておきたいので、基本的には最速~2ms程度でいいと思う。
ただし、ベース&ウワモノのド頭に潰しきれない部分が多少残っていた方が、キックとアタックと相まって強力なアタックを生んだりする。
さらに、この潰しきれない部分がキックに潰される感を生む大事な要素になってきたりもするので、ほんの少しだけド頭部分を残しておくような設定の方が個人的には好み。
まあベタッ!っとド頭から潰す人も多いのでこの辺は好みの問題ではある。

リリース・タイムについては穴の掘り終わりの傾斜角度。
傾斜角度がキツければキツいほど(リリース・タイムが速ければ速いほど)素早く圧縮を解除する。
こいつをコントロールすることで、どんなタイミングでベース&ウワモノの音量を元に戻すかを調整する。
メジャーなのは8分(キックのウラ)に合わせて圧縮を解除してやる方法だが、アタック部分のみを潰してすぐに解除させたり、8分より前のめりに解除させたりとそのタイミングは人によって様々。
また、同じ8分でも8分で急激に解除させるのか、16分あたりから緩やかに解除させるのかでも設定が変わってくる。
さらに、曲のBPM(テンポ)、後述のスレッショルドやトリガーにするキックの波形によっても設定が変わってくるので「○msだったら間違いない」という値は存在しない。
動画や雑誌に載っているリリース・タイムの値を参考にしたとしても、それはBPM、スレッショルド、トリガーにするキックの波形などの条件が全く同じじゃないとあまり意味がないので注意。
数値で云々というよりは、自分の表現したいノリをイメージして追い込んでやるといい。

続いてレシオ。
レシオは圧縮率になるので穴の深さをコントロールするパラメータになる。
ただし、これはスレッショルドより上の部分での話。
穴をある程度深く掘るためにはレシオの値だけでなくスレッショルドもそれなりに下げなければならないので注意。

ベースやパッドなどをガッツリ潰したいのであれば4:1~8:1くらい、リードやボーカル、全体などを軽く潰したいのであれば2:1~4:1くらいでいいと思う。

最後にスレッショルド。
こちらも基本的には穴の深さをコントロールするパラメータになるのだが、穴を空けている時間にも関係してくるということを覚えておきたい。

というのも、トリガーにしているキックの波形というものは、以下のように時間の経過と共に減衰していく。

ここにスレッショルド値のラインを描いてみるとこんな感じ。

ここからスレッショルド値のラインをさらに深くした場合を考えてみる。
波形がスレッショルド値のラインを超えている部分の長さに注目してみてほしい。

こうなる。
後者の方が波形がスレッショルド値のラインを超えている時間が長くなっているのがわかると思う。

つまり、キックのような波形をトリガーにした場合、スレッショルドを下げればさげるほど、リリース・タイムの値に関係なく圧縮を続ける時間が長くなるわけだ。
なので、圧縮量を増やしたいからと言ってベラボーにスレッショルドを下げると、リリース・タイムの値にかかわらず圧縮の解除は遅くなっていくということを覚えておきたい。