どもども。
今回からディレイ編に突入。
ギターやシンセのサウンドメイクでよく使われる超メジャーエフェクトだが、ミックスにおいても使われてないようでほぼ100%使われているスーパー黒子エフェクト。
自分の作品がな〜んか薄っぺらいと感じてるそこの君!
是非とも『ディレイ』お試しあれ。
ディレイとは
ディレイとは日本語で『遅れ』、『遅延』という意味を持つ単語。
エフェクトのディレイはその名のとおり、原音が鳴った後に1回~複数回の『遅延音』を発生させるエフェクトである。
例えば以下のようなサンプル。
こいつにディレイを掛けて遅延音を一回だけ発生させてみると以下のようになる。
超簡単に言ってしまえば、原音のコピーを少し遅らせて鳴らすエフェクト。
それがディレイ。
ちなみに遅延音を複数鳴らすこともできる。
もっと増やして遅延音同士の間隔を狭めると、
こんなリバーブに似たような効果を得ることも出来る。
ディレイの使用目的
ではそんなディレイ、ミックスでは一体どのような目的で使用されるのか?
大きくは3つ。
音の『厚み』と『広がり』の演出、そして『空間の補填』だ。
一聞遅延音とは関係なさそうなこの3つ。
一体どんな関係があるのか?
音の厚み
まずは『厚み』。
リバーブ編でも説明した通り、残響の正体は無数の反射音の集合体。
このうち初期反射音といくつかの反射音は、直接音からほんの数百分の一秒の遅れで耳に届く。
※初期反射音についてはこちらの記事をチェック。
数百分の一秒。
これって一瞬。
一瞬で直接音と反射音が耳に届く。
そのため、我々の耳ってのは普段の生活の中で音というものを聞く場合、直接音と初期反射音を含むいくつかの反射音をハッキリとは区別できす一つの音として認識してしまっている。
直接音と初期反射音を含むいくつかの反射音までを直接音と捉えているわけだ。
これに対してオンマイク(音源のすぐ近くにマイクを設置)で歌や楽器のレコーディングをした場合、直接音はほとんどエネルギーの減衰がない状態でマイクに届くのに対して、反射音はかなりエネルギーが減衰した状態でマイクに届く。
そのため、直接音と反射音の音量差がかなり大きくなり、ほぼほぼ直接音だけが聞こえるようなソースになる。
前述のとおり我々の耳は普段、直接音から初期反射音を含むいくつかの反射音までを直接音だと認識している。
なので、このようにほぼほぼ直接音だけが聞こえるようなソースを聞くと、妙に『迫力がない』といった印象をうける。
そりゃそうだ。
片や複数の音が重なった音。
片や一つの音。
これがいわゆる音の『厚み』ってやつの正体。
オンマイクでレコーディングしたソースってのはどうしてもこの厚みが欠けてしまうのだ。
そこで、ディレイを使って人工的に反射音をくっつけてやることで厚みをつけてやる。
ちょいとやってみる。
先ほどのサンプルにディレイで厚みを出してみる。
ここではフィードバックは0(遅延音が一回だけ鳴る)、ディレイタイムを1/16(BPM140)にしてディレイをかけてみる。
するとこんな感じになる。
ちょっとわかりやすくしてみたが、実際にはもうちょい目立たないように使われる場合が多い。
ディレイタイムは40msくらい。
レベルは原音マイナス20dBくらい。
こんな感じ。
わかるだろうか?
耳を凝らして聴こえるくらい、オケに混ぜたらほぼ気付かない程度。
微々たる変化なのだが、このひと手間でソースの存在感をググっと向上させることができる。
音の広がり
次に『広がり』。
生楽器や生声のレコーディングってのはモノラルで行うのが主流。
それ自体に音の左右という概念はなく、ソースは点として存在していることになる。
生楽器や生声ってのはある一点から音が発信されているので、これは理にかなったレコーディング方法といえる。
しかし、時にミックスではこの点を線で聴かせたいといった場合もある。
例えば以下のようなシンセパッド。
こいつを下の図のように左右に広げたい場合、一体どうしたらいいのか?
Panを振ることで左右に移動させることはできるが、それは点の移動であり決して左右に広がりはしない。
こんなときディレイを使えば点であるシンセパッドを左右に広げることができる。
ちょいとやってみる。
例えば以下のようなサンプル。
まずはこいつのPanを右か左どちらかに振る。
Panの値を上げれば上げるほど左右に広がるが、ここではわかりやすいように100%振ってみる。
したらばディレイで遅延音を生成して原音と反対側に100%振る(原音が右100%なら遅延音は左100%)。
パラメータはフィードバック0(遅延音が一回だけ鳴る)、ディレイタイムを20msに設定。
するとこんな感じになる。
原音とデイレイ音の音量を調整。
すると、
どうだろう?
左右に広がったように聞こえないだろうか?
この効果を利用してモノラルソースに幅を持たせることができる。
また、ボーカルやギターソロなど、音像をセンターに置いたまま広がりを出したいという場合は、原音はセンターに置いたままにして左右に遅延音を配置することで音に厚みを出しつつ広がりをコントロールすることができる。
有名なのは左右交互に遅延音を配置するピンポンディレイという手法。
例えば以下のようなボーカル。
こいつにピンポンディレイをかけてみる。
ここではフィードバック10程度、ディレイタイム40msにしてみる。
するとこんな感じになる。
こんな感じでイケる。
左右の幅と厚みが出たと思う。
空間の補填
最後は『空間の補填』。
例えば先ほどのギター。
ボーカルがセンターに入ってくると仮定して左に100%寄せたとする。
この場合、右側のポジションがガラ空きになる。
ギターをもう1本足すか他の音色を入れるなど、アレンジでバランスをとるという手もあるのだが、バンドモノの場合パートを増やしたくないという場合も多い。
そんな時に昔からよく使われている手法。
フィードバック0(遅延音が一回だけ鳴る)、ディレイタイム20msで右側30%程度に遅延音を配置してやる。
イメージはこんな感じ。
するとこんな感じになる。
わかろだろうか?
言われてみれば右でも鳴ってるわってくらい。
微々たる変化だが、あるとないでは結構違う。
まとめ
今回はここまで。
正味な話、ディレイは好みやジャンル、時代によってもかなり設定が変わるエフェクトなので、パラメータの設定値はあくまで一例だと思ってほしい。
どうしていいかわからないって人は、とりあえずいろんな曲を聴いてみて、どんなジャンルの曲にどんな遅延音が付けられてるのかを調べてみるといいと思う。
耳を凝らしてみるといろんな遅延音がくっついてることに気づくはず。
ちなみに実際のミックスでは、ディレイで生成した遅延音をさらにリバーブにぶち込むことでより複雑な残響を作ったりする。
その辺も考えながら聴いてみると「じゃディレイはこうしてリバーブはこうすればこんな感じになるかな」みたいな想像が少しずつできるようになると思う。
次回はディレイのパラメータについてウンチくろうと思う。
ではでは。