どもども。
今回は、ボーカルにディレイをかける際のあれこれについてウンチクってみようと思う。
要所要所でオーディオサンプルを用意しているが、スマホのスピーカーではちょいとわかりにくいと思うので、ある程度音量が出せるスピーカーやイヤホンまたはヘッドホンで聞いてみることをオススメする。
ちなみに今回紹介する例は全てセンドでディレイを使用しているので、センドって何?って人はこちらの記事をチェックしてみてほしい。
自分のDAWでセンドでエフェクトを使う方法については各々でマニュアルを確認してほしいが、Logicユーザーの人はこちらの記事にまとめてあるので参考までに。
左右に広げつつ厚みを出す
ギター編でも紹介した左右に広げつつ厚みを出す方法。
センターに配置する主役によく使われる方法で、音像をセンターにしっかり残しつつ左右の広がりを演出したい場合に使われる。
例えば以下のサンプル。
こいつを左右に広げつつ厚みを出してみる。
まずはお手持ちのディレイを『ピンポンディレイ』モードに。
Feedbackは左右に最低1つずつ遅延音を配置する必要があるため0%はNGだが、10%未満程度で十分だと思う。
あっさり仕上げたいなら左右1個ずつの遅延音でも全然OK。
ここでは10%に設定。
Delay Timeは原音に重ねることが重要になるので20〜100msくらいに設定。
原音と重ねて鳴らすことを意識しつつ、ほんのちょっとだけタイミングをずらすイメージ。
ここでは40msに設定。
するとこんな感じになる。
お次は音量バランスの調整。
基本的に遅延音の音量が大きいほど左右の広がりを感じることになるので、どのくらい左右に広げたいかと相談しつつ音量を調整する。
オケに混ぜた時、アップテンポの曲なら時折左右を感じる程度、静かな曲なら比較的はっきりと左右を感じるくらいがいいと思う。
具体的には原音-10〜20dBくらい。
ここでは-20dBまで落としてみる。
するとこんな感じになる。
最後にちょっと気になる耳障りな高域と低域のモコりをフィルタでカット。
この辺は場面次第ではあるが、ここでは300Hz以下、6kHz以上をカット。
するとこんな感じになる。
音像をしっかりとセンターに残しつつ、左右への広がりを演出できたと思う。
Delay Time:40ms
原音との音量差:-20dB
Hi Pass:300Hz
Lo Pass:6kHz
【処理前】
【処理後】
ショートディレイで簡易ダブリング①
ダブリング(ダブルトラック)とは、同じフレーズを2回レコーディングして重ねる手法で、音に厚みを出したり独特の雰囲気を得ることができるテクニック。
本来はトラックを2つ用意して音を重ねるわけだが、1つのトラックにディレイを使うことでこれを再現することができる。
やってみる。
例えば以下のサンプル。
まずはFeedbackを0%に設定して遅延音を1個生成。
Delay Timeは速めに設定。
速すぎると効果がなくなってしまうし、遅すぎるとダブリング感がなくなってしまうので10〜50msくらいがいいと思う。
ここでは35msに設定。
また、今回使用しているWavesのH-Delayの場合、センド量を0dBまで上げても遅延音の音量が原音よりも小さくなるので、一旦原音との音量差が0dBになるように音量を調整。
するとこんな感じに。
搭載されていれば、軽〜くモジュレーションをかけて原音とのピッチ差を発生させる。
するとこんな感じになる。
本物のダブリングよりも機械的ではあるが『らしさ』を表現できたと思う。
Delay Time:35ms
原音との音量差:0dB
【処理前】
【処理後】
ショートディレイで簡易ダブリング②
もう一つダブリングネタ。
サビやコーラスなど特定のフレーズにステレオ感を持たせて印象づけるというテクニック。
まずは原音を左右どちらかに50〜100%振る。
ここでは左に75%振ってみる。
したらばFeedbackを0%に設定して遅延音を1個生成。
したらば原音と反対側(ここでは右75%)に配置。
Delay Timeは10〜30msくらい。
ここでは25msに設定。
するとこんな感じに。
最後に音量バランスの調整。
Delay Time:25ms
原音との音量差:+3dB
Pan:原音 左75%、遅延音 右75%
【処理前】
【処理後】
空間の補填
ボーカルってのは人の声。
どこかで息継ぎをしなけりゃおっ死んでしまうし、体力面を考えても一曲を通してずっと声を出し続けるってのはまず不可能。
声と声の間に必ず『間』が存在する。
こういう空間。
この隙間を遅延音で埋めてやる。
埋めてやると言っても隙間を全部埋めるというわけではなく、遅延音を鳴らすことで隙間を小さくするようなイメージ。
ギター同様、よく使われるのが『テンポディレイ』。
例えば先ほどのサンプル。
こいつにテンポディレイをかけてみる。
Feedback20%程度、Delay TimeをホストのBPMに合わせて1/4に設定。
するとこんな感じに。
あとは音量バランス。
今回の場合遅延音をある程度聴かせることで目的が達成できるのだが、ボーカルの場合遅延音の音量を大きくしすぎてしまうと、言葉同士が重なりあってしまい何を言っているかわからなくなってしまうので、あまり大きくしすぎない方がいいと思う。
具体的には原音マイナス15〜25dBくらい。
ここでは-20dBまで落としてみる。
するとこんな感じになる。
最後にやはり場面次第ではあるが、強すぎる高域をカット。
ここでは5kHz以上をカット。
するとこんな感じになる。
Delay Time:1/4
原音との音量差:-20dB
Lo Pass:5kHz
【処理前】
【処理後】
まとめ
今回はここまで。
繰り返しになるが、実際のミックスではディレイで生成した遅延音をさらにリバーブにぶち込むことでより複雑な残響を作ったりする。
原音はどのくらいリバーブに送るか、ディレイ音はどのくらいリバーブに送るか、これをトラックごとに調整していくことで空間を構築していく。
ぶっちゃけこれがかなり難しい。
筆者もまだまだお勉強中の身だが、とにかくいろんな曲を聴いて、
「どんな遅延音と残響がついてるか」
「結果、どんな空間が表現されているか」
この辺を調べてみると面白いと思う。
ではでは。