どもども。
今回は、エレキギターにディレイをかける際のあれこれについてウンチクってみようと思う。
要所要所でオーディオサンプルを用意しているが、スマホのスピーカーではちょいとわかりにくいと思うので、ある程度音量が出せるスピーカーやイヤホンまたはヘッドホンで聞いてみることをオススメする。
ちなみに今回紹介する例は全てセンドでディレイを使用しているので、センドって何?って人はこちらの記事をチェックしてみてほしい。
自分のDAWでセンドでエフェクトを使う方法については各々でマニュアルを確認してほしいが、Logicユーザーの人はこちらの記事にまとめてあるので参考までに。
厚みを出す
まずは音に厚みを出す方法。
ギターソロ、ギターのバッキングなど、メイン~ウワモノによく使われる手法だ。
今回は以下のサンプルに厚みを出してみる。
ディレイ編①でも解説したが厚みの正体は「初期反射音を含むいくつかの反射音」。
こいつを遅延音で再現するイメージ。
ただし、ミックスではリバーブも併用することがほとんどなので、個人的にはディレイで付与する遅延音は1〜2個くらいでいいと思う。
ということで、ここではFeedbackを0(遅延音1回)に設定。
Delay Timeは遅延音を原音に重ねることが重要なので比較的速めの設定が望ましい。
MS単位で言えば20〜100msくらい。
原音と重ねて鳴らすことを意識しつつ、ほんのちょっとだけタイミングをずらすイメージ。
ここでは40msに設定。
するとこんな感じになる。
エフェクトのコーラスを掛けたような雰囲気。
ちなみに、こんな感じで比較的早いDelay Timeで使用するディレイのことを『ショートディレイ』という。
具体的に◯ms以内がショートディレイだという決まりがあるわけではないが、おおよそ100ms以内を指す場合が多い。
最後に音量バランス。
遅延音の音量を調整して原音にほんの少し影がついているような状態に仕上げる。
Sendレベルで調整してもディレイを挿してるAUXチャンネルのレベルフェーダーで調整してもどっちでもいい。
筆者の場合、コーラスくささがなくなるくらいまで遅延音の音量を落とす。
感覚としては、ソロで聴いた時に「言われてみれば確かに遅延音が鳴ってるな」と気づく感じ。
オケに混ぜたらほぼわからないレベル。
具体的には原音-15〜20dBくらいになる場合が多い。
ここでは-17dB程度まで落としてみる。
するとこんな感じに。
当然遅延音の音量が大きいほうがより厚みを感じるが、あまり大きすぎるとコーラスくささが目立ってしまうので、原音の聴こえ方そのままに厚みが出せるラインを探ってやるイメージ。
Delay Time:40ms
原音との音量差:-17dB
【処理前】
【処理後】
左右に広げつつ厚みを出す
お次は左右に広げつつ厚みを出す方法。
ギターソロなどセンターに配置する主役によく使われる方法で、音像をセンターにしっかり残しつつ左右の広がりを演出したい場合に使われる。
やってみる。
ソースはこちら。
まずはお手持ちのディレイを『ピンポンディレイ』モードに。
Feedbackは左右に最低1つずつ遅延音を配置する必要があるため0%はNGだが、あまり大きい値にする必要もないと思う。
個人的には10%未満で十分。
あっさり仕上げたいなら左右1個ずつの遅延音でも全然OK。
ここでは10%に設定。
Delay Timeは先ほどと同じく原音に重ねることが重要なので20〜100msくらいに設定。
左右にずれているぶんさっきよりも遅延音の確認がしやすいと思う。
原音と重ねて鳴らすことを意識しつつ、ほんのちょっとだけタイミングをずらすイメージ。
ここでは50msに設定。
するとこんな感じになる。
お次は音量バランスの調整。
基本的に遅延音の音量が大きいほど左右の広がりを感じることになるので、どのくらい左右に広げたいかと相談しつつ音量を調整する。
オケに混ぜた時、アップテンポの曲なら時折左右を感じる程度、静かな曲なら比較的はっきりと左右を感じるくらいがいいと思う。
具体的には原音-10〜20dBくらい。
ここでは-15dBまで落としてみる。
するとこんな感じになる。
最後にちょっと気になる耳障りな高域と低域のモコりをフィルタでカット。
ここでは300Hz以下と4kHz以上をカットしてみた。
するとこんな感じになる。
音像をしっかりとセンターに残しつつ、左右への広がりを演出できたと思う。
Delay Time:50ms
原音との音量差:-15dB
Hi Pass:200Hz
Lo Pass:2kHz
【処理前】
【処理後】
空間の補填
続いては空間の補填。
ギター1本を左右どちらかに配置した場合や、2本のギターを左右に100%振り切った場合などによく使われる手法。
前者の場合はギターを配置した反対側、後者の場合は左右両端からセンターまでの間がスカスカになる。
この空間に遅延音を配置することで左右の音数のバランスをとったり、全体の音数の補填を行う。
やってみる。
まずは原音のPanを右か左どちらかに好きなだけ振る。
ここでは最初のサンプルを左に75%振ってみる。
したらばフィードバック0%で遅延音を1つ生成して、そいつを原音と反対側約37.5%の位置に配置。
Delay Timeは20m〜50msくらい。
厚みを出す時よりも早めでいいと思う。
ここでは20msに設定。
するとこんな感じになる。
このままではバランス悪く左右に広がっただけなので、ここから遅延音の音量を絞っていく。
大きければ大きいほど左右の定位がボヤけてしまうので、かなり小さめでいい。
感覚としては「言われてみてば鳴ってるな」程度。
オケに混ぜたらほぼわからないレベル。
具体的には原音マイナス20〜25dBくらいだろうか。
ここでは-20dBまで落としてみる。
するとこんな感じになる。
「言われてみてば鳴ってるな」程度。
気付かれなくていいラインがベストだと思う。
Delay Time:20ms
原音との音量差:-20dB
【処理前】
【処理後】
テンポディレイ
空間の補填は左右の定位だけの話ではない。
時間の経過上にある空間も補填の対象。
要は音と音の『間』だ。
こういう空間。
ギターの場合、リリースが短くなるクリーンサウンドやアルペジオのフレーズなんかはこの空間がデカくなりがち。
この隙間を遅延音で埋めてやる。
よく使われるのが『テンポディレイ』と呼ばれるディレイの掛け方。
楽曲のテンポ(BPM)に合わせて遅延音を生成する手法だ。
例えば以下のようなサンプル。
こいつにテンポディレイをかけてみる。
Feedback35%程度、Delay TimeをホストのBPMに合わせて1/4に設定。
するとこんな感じに。
あとは音量バランス。
今回の場合遅延音をある程度聴かせることで目的が達成できるので、音量差は比較的小さくていい。
具体的には原音マイナス5〜15dBくらい。
ここでは-10dBまで落としてみる。
するとこんな感じになる。
続いてフィルタで耳障りをよく。
ここでは300Hz以下と2kHz以上をカット。
するとこんな感じになる。
1/4以外にも1/2、1/8D(付点8分)などいろいろあるが、タイミングによっては大きくソースや楽曲のグルーヴを変化させてしまうので自分の曲じゃない場合は注意。
Delay Time:1/4
原音との音量差:-10dB
Hi Pass:300Hz
Lo Pass:4kHz
【処理前】
【処理後】
まとめ
今回はここまで。
次回はボーカルにディレイをかける際のあれこれについてウンチクってみようと思う。
ではでは。