先日、人気DAW「Studio One」の最新バージョン「Studio One 3」がリリースされた。
幾つかの機能が追加、ブラッシュアップされ、さらなる進化を遂げた模様。
早速、筆者もデモ版を入手してみたので、気になる機能を実際に使ってみた。
アレンジ・トラック
DAWで楽曲を作るときって楽曲の構成を把握しやすいように「マーカー」を使うじゃないですか。
Studio Oneにも当然マーカー機能がついてるわけだが、それとは別に「アレンジ・トラック」というものがVer3より追加された。
このアレンジトラック、言ってみればマーカーの進化版と言える非常に便利な機能。
とにかく作業効率が飛躍的に向上するのだが、どんなことが出来るのかを言葉だけで説明するのがなかなか難しいので、実際のUIを見ながら紹介してみる。
例えば以下のような4トラックのプロジェクトがあったとする。
トラックの上部にあるアレンジトラックのアイコン(写真の赤丸部分)をクリックする。
すると、各トラックの一番上にアレンジトラックが表示される。
トラック上をクリックすると、写真のように「イントロ」、「バース」、「コーラス」・・・という感じで曲の構成を表すブロックが表示される。
ちなみにこのブロックの長さや色、中の文字は自分の好みに変更できる。
ここではよくある曲進行「イントロ → Aメロ → Bメロ → サビ」という内容に変更してみた。
ここまでの内容を見るとまさに見やすい「マーカー」なわけだが、アレンジトラックの便利さはここから。
例えば、Aメロの部分をサビの後ろに持っていきたいとする。
一般的なDAWの場合だと「各トラックのリージョンをAメロの始点と終点で分割した後、まとめて選択してサビの後ろにドラッグ」という流れになると思うが、Studio Oneの場合、アレンジトラックのAメロの部分のみをドラッグすればその処理が完了してしまう。
非常に便利だな〜と感じたのが、「各トラックのリージョンをAメロの始点と終点で分割する」という作業がいらないという点。
アレンジトラックのブロックをドラッグすれば、各トラックのリージョンはたとえ分割されていなくても自動で分割してくれる。
・・・想像してみてほしい。
あの一手間が省ける快感を。
それだけで「おおっ!」っと思うユーザーも多いと思う。
もちろんできることはドラッグだけではない。
コピーやペースト、カットなどもこのアレンジトラック一つでできる。
複数のアレンジトラックブロックを選択してコピーすれば、あっという間にプロジェクトが構築されていくわけだ。
楽曲の進行単位での作業が非常にスムーズかつスピーディに行える。
また、アレンジトラックのブロックをダブルクリックすると、該当するブロックの各トラックの内容が拡大表示されるのも嬉しい。
スクラッチパッド
打ち込み派のDTMerであればわかっていただけると思うが、曲を作っていると、
「この部分のアレンジをこうしてみたらどうだろう?」
っと言った感じで、言わば「実験的に」打ち込みのデータをいじりたいときがあると思う。
そんな場合、必ずしもアイデアがしっくりくるとは限らないので、現在のデータをタイムラインの後ろの方や別トラックに避難させると思う。
複数のパターンを試したいときはさらにタイムラインの後ろにもう一つコピー・・・。
そのうちタイムラインがぐちゃぐちゃになって、どこに何のデータがあるのかが自分でもわからなくなる。
こんな経験をしたことがあるのは筆者だけではないと思う。
そんなときに活躍してくれるのがこの「スクラッチパッド」という機能。
簡単に言ってしまえばこいつは「実験スペース」。
これも実際にUIを見ながら紹介してみる。
例えば、Bメロのアレンジの別パターンを試してみたいとする。
そんなときはアレンジトラックのBメロのブロック上で右クリック → 「新規スクラッチパッドにコピー」を選択。
すると、タイムラインの右側にBメロの内容と同じデータが複製される。
????っと思う方も多いと思うが、このスペースは実際のタイムライン上からは独立しており、データに変更を加えてもメインのタイムライン上のデータには影響を与えない。
つまり、元のデータをそのまま残しつつ様々なデータの編集を試すことができるわけだ。
そして「よし!このアレンジ行こう!」と思ったときは、スクラッチパッド上のアレンジトラックのブロックをメインのタイムライン上のブロックにドラッグしてやれば、あっという間にデータが置換され変更が適用される。
ちなみにこのスクラッチパッドは複数立ち上げることができるので、さまざまな実験を行うことが出来る。
さらに、このスクラッチパッドの内容はプロジェクトと一緒に保存することも出来るので、アイデアを溜め込んでおくことも可能。
これはなかなか便利な機能。
FXチェーン
Studio Oneはあるトラックに複数のエフェクトを挿入した場合、それらの接続方法を以下のような配置図で確認出来る仕様になっている。
また、接続方法も直列と並列を選択でき、自由にエフェクトのルーティングを組むことができる。
一般的なDAWでこういった方法を試すには、トラックの複製やAUXバスを使って一手間かけることになると思うが、Studio Oneではいとも簡単にドラッグのみでルーティングを組むことが出来る。
また作成したルーティングはプリセットとして保存することが出来るので、よく使用するような特定の組み合わせをあらかじめプリセットとして保存しておくこともできる。
Multi Instrument
マルチインストゥルメントは一つのプラグインとして立ち上げることができるのだが、そのマルチインストゥルメントの中に複数の音源を立ち上げることができる。
以下の写真はマルチインストゥルメント上に「FM8」、「Massive」、「Noise Maker」を立ちあげ、ノートFXのArpeggiatorを挿入したところ。
ドラッグのみでいとも簡単にレイヤーサウンドを作成することができてしまう。
さらに関心したのが鍵盤上部のキーマップ。
こちらもドラッグのみで音源別のキーマップを作成することが出来る。
※写真赤囲み部分。
こういった機能を持つプラグインは他にもあるが、Studio Oneは標準でこの機能を搭載してしまっている。
新ソフトウェアインストゥルメント
Mai Tai
Mai TaiはポリフォニックVA(バーチャルアナログ)シンセ。
OSCを2基搭載したどちらかといえばシンプル構成のシンセで、アナログシンセの基本的な機能はほぼほぼ抑えており、操作方法もシンプルなのでアナログシンセの構造がわかるユーザーなら何の抵抗もなく使用できる。
EG(エンベロープジェネレータ)が視覚的に表示されるのは嬉しい(最近では当たり前だが)。
基本的なサウンドはもちろん、様々なサウンドメイクに対応出来る。
Presence XT
こちらはいわゆるサンプラー。
写真をみてもわかると思うが、結構サウンドの加工が可能な作り。
アーティキュレーション・キースイッチやスクリプティング機能も搭載されており、生楽器特有のニュアンスやリアルなサウンドを作成できる。
14GBの生楽器中心のライブラリが付属しており、さらにPreSonusショップからコンテンツを追加することで簡単に拡張が可能。
また、純正コンテンツだけでなくEXS、Kontakt、Giga、SoundFontの読み込みにも対応している。
純正のライブラリのサウンドのクオリティについては・・・正直なところ万人が満足出来る質とは言えないと思う。
有料の専用音源などと比較してしまうとちょっと厳しい。(・・・当たり前か。)
まあ、これからDTMを始めるユーザーにとっては一通りの楽器がとりあえず揃うのでアリと言えばアリ。
まとめ
とまあこんな感じ。
今回紹介した内容の他にも、かなりの数の新機能追加や機能のブラッシュアップが行われている模様。
全体を通した感想としては、
無いなら無いでなんとかなるが、あると非常に便利な機能が追加された。
といった感じだろう。
Studio Oneでの製作に慣れてしまうと、他のDAWが「面倒くさくて使えない」と感じてしまう人も出てくるのではないだろうか?
使用者側のニーズをうまく捉えている。
そしてその操作性が素晴らしい。
作業のほとんどがドラッグ&ドロップで完結するので、非常にスムーズな製作が可能。
ラインナップは無料版の「Studio One Prime」を含めて3種類。
価格はそれぞれ、
Studio One 3 Professional ダウンロード版 : 42,800円
Studio One 3 Crossgrade(Professional) ダウンロード版 : 32,800円
Studio One 3 Artist ダウンロード版 : 12,800円
良心的ですな。
Logicは別として、他の主要DAWのフラッグシップモデルは5、6万するわけですから(笑)
また、アップグレード版も同時にリリースされている。
Studio One Pro (v1) Professional 2 → Studio One 3 Professional DL : 14,630 円
Studio One Producer → Studio One 3 Professional DL : 20,185 円
Studio One Artist (V1,V2) → Studio One 3 Professional DL : 35,000 円
Studio One Artist → Studio One 3 Artist DL : 5,074 円
現在のところリリースされているのはダウンロード版のみ。
パッケージ版は近日発売とのこと。
Studio One (PreSonus)
Studio One Professional
Studio One Artist