超初心者のためのミキシング講座/イコライザー編⑨【エレキギターのEQポイント】

今回はエレキギターのEQポイントを紹介。
一言で「エレキギター」と言ってもモデルやアンプでの音作りによってその音色は様々。
当然音色によって、さらには奏法によってもその周波数特性は様々なわけだが、各周波数帯域に含まれる成分は以外と似ていたりする。

エレキギターの周波数帯域別成分

今回は、VIR2の定番エレキギター音源「ELECTRI6ITY」を使ってサンプルを作ってみた。

プリセットは「Les Paul」。
ギブソンのレスポールですな。
DI音を出力したものに、Universal Audioの「Marshall Plexi Super Lead 1959」を掛けて歪ませた。

uad-m
・・・製作している楽曲の都合上かき鳴らし系のフレーズになってしまったので、使い回しで申し訳ないがハイゲインのサンプルも別に用意した。
こちらには同じくELECTRI6ITYで打ち込んだものにUniversal Audioの「ENGL Victor Smolski Signature Limited Edition (E646)」を掛けてある。

646
今回はこの2つのサンプルを例にしてEQ処理をしてみる。

【20Hz~80Hz】 超低域

キックやベースと同様、人間の耳が音として捉えにくい超低域と呼ばれる帯域。
ギターのみの楽曲や主役級に目立たせる場合を除いては低域メインのパートとの住み分けを考えてハイパスでカットしてしまったほうがいい。
POPであればまずカットしてしまったほうが良い結果になると思う。
バンドモノの場合もメタルやハードロックでない限りはカットしてしまったほうがうまくまとまる場合が多い。

【80Hz~150Hz】 重量感

重量感を担う帯域。
ミュート奏法時の「ズンズン」という重みを感じる帯域なので、ブーストしてやると重みが増す。
逆にカットしてやると軽い感じの音になる。
ただし、がむしゃらにブーストしてもモンモンとするだけなので、歯切れを感じる1.5kHz〜6kHzあたりの帯域の成分とうまくバランスとって目立たせたい。
POPなどの必要以上にギターを目立たせる必要がない楽曲の場合は、100〜150Hzあたりくらいまで超低域と一緒にハイパスでカットしてしまってもいいと思う。

【200Hz~600Hz】 太さ、鳴り、温かみ

200〜300Hzあたりに鳴り、300〜500Hzあたりに太さ、温かみを感じる成分があると思う。
ボディの鳴りや太さを足したいときにはこの辺りをブーストしてやるといい。
逆にパワフルさを感じすぎてしまう場合や篭りが気になる場合は、この辺りをピーキングで適量カットしてやるとスッキリする。
また、ボーカルの土台成分とかぶる場所でもあるので、センターに近い定位に配置する場合は派手なブーストは避けた方がいいと思う。

【700Hz~1.5kHz】 芯、コシ

ギターの音色の芯、コシになる成分がある帯域。
「高域を派手にしたいわけではないが、なんだか音がはっきりしない」という場合はこのあたりをブーストしてやると抜けが良くなる。
キックやベースの成分が薄めな帯域でもあるので有効に使いたい。

【1.5kHz~6kHz】 歯切れ、ギラつき、ピックが弦とぶつかる音

1.5〜3kHzあたりにはブーストすると音の歯切れがよくなる「カリッ」っという成分、4〜6kHzくらいになるとピックが弦に当たる「ペチッ」っという成分がある。
2〜5kHzあたりを広めのQで全体的に持ち上げるてやると「カリカリ」っとしたサウンドになる。
カッティング(ブラッシング)の歯切れを演出するのもこの帯域。
派手さ(荒々しさ)を感じる部分でもあるので激し目のバンドものの場合は大事に使いたい。
ただし、この帯域の成分はあまり耳に優しくない。
さらに上の帯域にあるギラつきを感じる成分も使って上手に仕上げたい。

【8kHz~12kHz】 煌びやかさ

煌びやかさを演出する成分が含まれる帯域。
クリーントーンはこの帯域を持ち上げてやることで煌びやかさを演出できる。

っとこんな感じ。

具体例

では、上記のポイントを使った例をいくつか。

ジャキジャキのかき鳴らしギター

※4小節ごとにEQのON/OFFが切り替わります(最初はOFF)。
低域を120Hzあたりまでハイパスでカットして少し軽めの印象に。
300Hzあたりの鳴りを抑えて4kHzあたりを中心にブーストしてギラつきとガリつきを強調、8kHzあたりもブーストして煌びやかさをアップ。

古さを感じる暖かいギター

※4小節ごとにEQのON/OFFが切り替わります(最初はOFF)。
400Hzあたりをブーストして温かみをアップ、4kHz、8kHzあたりを多めにカットしてギラつきを抑えて落ち着いた印象に。

篭りと鳴りを抑えたスッキリギター

※4小節ごとにEQのON/OFFが切り替わります(最初はOFF)。

ザクザクのヘビーサウンド

※4小節ごとにEQのON/OFFが切り替わります(最初はOFF)。
80Hz以下をハイパスでカット。
125Hzあたりを少し持ち上げて重量感をアップ、5kHzあたりを広めのQでブーストしてミュート時のザクザク感をアップ。

まとめ

今回はここまで。
エレキギターの音色は、エレキベースの時と同様にギタリストによってかなり音が作りこまれている場合が多い。
ソース単体でのEQ処理はマイクで拾った結果不足した成分と膨らんだ成分の補正に留めて、他のパートと重ねた際に必要に応じて成分の出し引きをするのがいいと思う。

次回はアコースティックギターのEQポイントをご紹介。

ではでは。

Chanomaオススメのミキシングアイテム

Universal Audio APOLLO TWIN

Universal Audioは1176や610などの名機と呼ばれるアウトボードを生み出しているアメリカの老舗プロフェッショナルオーディオ機器ブランド。 Apollo Twin は同社のハイクオリティDSPプラグイン「UAD-2」が利用できるDSPチップを搭載したコンパクトオーディオインターフェース。 「往年のアナログ機器のサウンドをプラグインで再現」というコンセプトのもとに開発されるUAD-2は、NEVE 1073、610、APIやSSL、1176、LA-2A、Pultec EQなど数々の名機をプラグイン化しており、その技術は世界中で非常に高い評価を得ている。 プロの定番プラグインであるWavesを始め、様々なブランドが名機のエミュレートプラグインをリリースしているが、ビンテージ機材のエミュレーション技術においては間違いなくUniversal Audioが群を抜いている。 最近ではMarshallやFender、Ampegのアンプシミュレーターなどもリリースしており、ギタリストやベーシストにもオススメ。 手にしたその日からワンランク上のレコーディング、ミキシング環境が手に入る。

Waves Plugin

プラグインエフェクトと言えば「Waves」。 多くのプロも使用しているハイクオリティエフェクト。 ありきたりな選択肢だが、やはり良いものは良い。 余計な音質の変化はないし、余計な味つけもされないし、エフェクトのかかり具合も良く、使い勝手も良く、狙った効果がきちんと得られる。 CPU負荷も比較的軽めなうえ、動作も安定しているので安心して使用できる点もGood。 一昔前に比べてかなり安く手に入るようになってきているので、コスパ面でもオススメ出来る。 Silver、Gold、Platinumをはじめ多数のバンドルがラインナップされており、目的やレベルに応じて様々な選択肢をチョイスできるのも嬉しい。

audio-technica ATH-M70x

海外で人気のMシリーズのフラッグシップモデル。 決して周波数特性がフラットという機種ではないが、こいつの中高域の情報量は驚異的。 空間表現能力も驚異的でゴチャゴチャしている部分が丸見え。 他のヘッドホンで聴こえなかった音が面白いくらい見つかる。 くっついてしまったり、隠れてしまっている音もこいつなら一つ一つしっかりと確認できる。 但し、中高域が耳に張り付いてくるタイプなので、低域のモニタリングは慣れが必要? 「低域もある程度見える超高解像度版900ST」といった感じ。

YAMAHA MSP5 STUDIO

銘機「NS10M STUDIO」を開発したチームによるニアフィールドモニター「MSP STUDIO」シリーズの一番小さいサイズ。 フラットさに定評があり、モニタスピーカーとして各方面での評価も高い。 音質も非常にクリアで音像や定位もしっかりと捉えることができる。 とにかく飾り気のない素直な出音が特徴。 コスパはかなり高い。