今回はスネアのEQポイントをご紹介。
スネアはノリをキープする重要なパートで、ドラマーが最も重要視するピースでもある。
「スネアだけはマイスネア。」というドラマーも多いくらい。
楽曲全体のイメージをも左右するドラムの中でも花形中の花形的位置づけのピースでもあるので、EQにおいても柔軟な対応が出来るようにしっかりとポイントを押さえておきたい。
トップとボトム
最近の生ドラム音源は、「Top」と「Bottom」が用意されており、それらをブレンドして音作りが出来るようになっているものが多い。
Topは打面側、Bottomはスナッピー側にマイクを設置してレコーディングしたもので、主にTopは「スパン!」、Bottomは「ジャリリ・・」という感じの音の成分で構成されている。
スネアのレコーディングをする場合、このTopとBottomをレコーディングしてそれらをブレンドすることで音作りをするのが一般的で、EQ処理についても、
①TopとBottomを別々にEQ処理。
②Busでまとめた後に最終的なEQ処理。
という手順で処理する場合が多い。
・・・が、ここでその説明をしていくとなるといろいろとアレなので、今回は「トップとボトムをブレンドした後のスネア全体へのEQ処理」ということで紹介させてもらう。
スネアの周波数帯域別成分
今回も例のごとくNIの「Studio Drummer」。
キットは「Session Kit – Full」。
付属のエフェクトは全てOFFで使用、マイキングは以下の通り。
TOP MIC・・・トップマイク。
BTM MIC・・・ボトムマイク。
BLEED・・・他のピースによるスナッピーの共鳴具合。
BLEEDは筆者の好みで0(実際のドラムでも何とか鳴らないようにしたいと感じる人間なので)。
実際に聴いてみる。
※聴きやすいようにコンプレッサーを掛けてます。
こいつの周波数成分をアナライザーで見てみると以下のような感じ。
200Hzあたりをピークにして低域から高域までほぼほぼ全域に広がっている。
特に200Hz~10kHzくらいまではぎっしりと成分が敷き詰められており、ギターやボーカルをはじめ、様々な上モノとカブりやすいパートであることがわかる。
帯域別のEQポイント
では、それぞれの帯域にどんな成分が含ませているのかを見ていく。
帯域別に見ていくとおおよそ以下のような音で構成されてる。
100Hz~250Hz パワー・量感・重み 「ポンッ!」
この帯域はパワー感を担う成分が含まれる。
ブーストすればパワフルに、カットすれば軽い感じの音色になる。
250~500Hz 低めの鳴り 「コンッ!」
ポンッ!という太鼓らしい音が含まれる帯域。
スネアの音色の土台となっている場所でもあるので、あまり派手にカットするのは避けたほうがいい。
500~1kHz 鳴り・共鳴・木感・リム 「パァン!」「カァン!」
鳴りや共鳴音、木感、リムなどの成分が含まれる帯域。
この帯域はスネアの種類やチューニングによって含まれる成分やポイントにかなりバラつきがある。
どこにどんな成分があるかをじっくりと捜索しておきたい。
1~4kHz アタック 「カッ!」
アタック成分を構成する帯域。
とはいっても、この帯域だけをブーストしてもあまりアタック感を向上させることはできない場合も多い。
ここと500Hz〜1kHzの成分をうまく組み合わせることでアタックを演出するような感じ。
この帯域の成分はピンでどうこうというよりは、オケに混ぜたときにキックやベース、ギターなどのアタックとぶつからないように必要に応じて処理を施した方がいい気がする。
5~12kHz スナッピー 「ジャラッ!」
スネアの音色の最大の特徴でもあるスナッピーの音をどう聴かせたいかをコントロールする帯域。
ブーストすればスナッピー感が増し、カットすれば太鼓成分(胴鳴り)強めのスネアに仕上がる。
ま、例のごとく擬音は参考程度に(笑)。
ポイントは、
・どのくらい重みを与えるか。
・鳴りのどの辺を聴かせたいか。
・どのくらいアタックを出すか。
・スナッピー加減はどうするか。
といったところ。
具体例
では、上記のポイントを使った例をいくつか見てみようと思う。
低域をブーストしてパワーを強調
165Hzあたりをブーストしてパワーを補填。
300Hzあたりをブーストして低めの胴鳴りを強調。
「もう少し重くしたい」と感じる場合はこの辺りを突いてやるといい。
※4拍ごとにEQのON/OFFが切り替わります(最初はOFF)。
スナッピー感を強調してジャラっとした感じに
5kHz、12kHzをブーストしてスナッピー音を強調。
共鳴音を全体的にカット、情けない音にならないように300Hzあたりを少しブースト。
※4拍ごとにEQのON/OFFが切り替わります(最初はOFF)。
鳴りと共鳴音を抑えてタイトな感じに
900Hzあたりの共鳴音を多めにカット、2kHzあたりをブーストしてアタックを少しだけ強調。
合わせて170Hz、300Hz付近を調整して少し土台を固めてみた。
※4拍ごとにEQのON/OFFが切り替わります(最初はOFF)。
まとめ
今回はここまで。
ま、散々説明してきてなんだが・・・スネアの音作りのメインはスネア選びとチューニング。
DTMで言えば素材(音源)選びとその設定。
さらにはトップとボトムのブレンド加減やコンプの設定によってもかなり音色が変わってくる。
スナッピーや余韻のコントロールは、EQではなくそちらでやったほうがいい効果を得られると思う。
繰り返しになるが、EQはあくまで補正。
「EQだけでどんなスネアにでも変身出来る!」というものではないので覚えておきたい。
今後の予定としては、
①ハイハット
②タム
③オーバーヘッドマイクとドラム全体
④エレキギター
⑤オケとスネア
⑥ボーカル(男)
⑦オケとボーカル(男)
の順でEQポイントを紹介していく予定。
次回はハイハットのEQポイント。
ではでは。