優先順位は低くてもいい?

外付けのサウンドカードであるオーディオインターフェースには音の出口がない。
なので、実際に音を出すためにはそこにスピーカーもしくはヘッドホンを接続する必要がある。
ここで一般的に用いられるのがモニタ用のスピーカーやヘッドホンだ(DTMの場合)。
ぶっちゃけこれは、接続端子の形状さえ合うのであれば家にあるPCスピーカーやオーディオ鑑賞用のスピーカーやヘッドホンを接続しても技術的な問題は何もない。
スピーカーやヘッドホンに金をかけるなら、少しでもいいオーディオインターフェースや音源を買いたいと思う人も多いはず。
そんな人は無理して買わずに浮いたお金でいい音源やエフェクトを買ったほうが手っ取り早く曲のクオリティを向上させることが出来るだろう。
自分が満足できる出音を得られるのであれば何の問題もない。
ただし、楽曲製作の最終段階であるミキシングまで自分でやるという場合は、モニタ用のスピーカーやヘッドホンを用意することをオススメする。
リスニング向けのスピーカーやヘッドホンというものは、特定のジャンルの音楽が心地よく聴こえるように意図的に特定の周波数帯域が強調されていたり、なんらかの色づけがされているものが多い。
こういったスピーカーやヘッドホンでミキシングをすると、その環境でのみ最適に聴こえる状態に仕上がってしまう。
つまり、別の環境でリスナーが聴いた時、こちらの意図とは全く違う聴こえ方になってしまうのだ。
こんな状況を避けるため、ミキシングをするときはより多くのリスナーにこちらの意図する聴こえ方を提供できる状態にしてやらなければならない。
まあぶっちゃけリスナーのオーディオ環境なんてものは千差万別なわけだが、様々な環境に対応しやすいようになるだけニュートラルな状態にしてやることで、より多くのリスナーにこちらの意図する状態で楽曲を届けることができるようになる。
このニュートラルな状態というものを作るために必要になるのが「クセ」のないモニタ環境、すなわちモニタ用のスピーカーやヘッドホンだ。


人気のモニタスピーカーADAM AUDIOのA7XとYAMAHAのモニタヘッドホンHPH-MT8。

これらはあくまで素の音を確認できるよう余計な色づけがなく、フラットな周波数特性で音が聴けるように設計されている。
これらを使ってミキシングをすることが、より多くのリスナーにこちらの意図する状態で楽曲を聴いてもらうためには非常に重要になるのだ。
ちなみに、モニタ用のスピーカーやヘッドホンもオーディオ鑑賞用のそれと同様、基本的に高額になればなるほどダイナミクスレンジや周波数レンジが大きくなり音場の表現能力が高くなる。
また、機種にもよるが基本的には音の解像度も高額なものほど高くなるので、ひとつひとつの音をしっかりとモニタリングしやすくなる。
あまりにも安価で粗悪なものを買ってしまうと、モニタとしての役割をあまり果たしてくれなかったりもするので、買うならそこそこの金(スピーカーなら最低でも一本1~2万、ヘッドホンなら最低でも1.5万くらい)はする有名ブランドのものを買うことをオススメする。

ホントにクセがないモデルとは?

さて、そんなクセのないフラットな出音のモニタ用スピーカーorヘッドホンだが、聴き比べしてみると解かるがぶっちゃけブランドやモデルによってかなり出音が異なる(笑)
オーディオ鑑賞用のそれと比べればそりゃクセは少ないのだが、それでもかなり聴こえ方にはバラつきがあるのだ。
というのも、「フラットな周波数特性」とは全ての周波数帯域の音を同じレベルで鳴らすということではない。
全ての周波数帯域の音をバランス良鳴らすくということだ。
このバランスってのが各ブランドや個人の解釈で微妙に異なる。
故に、いろんな「フラット」が生まれる。
みんな自分のところの機種をこれこそがリファレンス(基準機)にふさわしいといった宣伝文句を使うが、「実はフラットに聴こえる」ということの定義自体がフワフワしたものなので、リファレンスの定義もフワフワなのだ。
おそらく初心者の場合、

「いったいどれが本物のフラットでクセのない音なのさ?」

ってことになると思う。


モニタ用ヘッドホンの定番SONYのMDR-CD900ST。
もの凄い普及率だが決してフラットではないと言われていたりもする。

で、こんな時はやっぱり視聴できる楽器屋に行って自分でいろんなモデルを聴いてみることをオススメする。
その中で、自分が一番各周波数帯域がバランス良く確認できると思ったモノをチョイスするのが理想だろう。
で、しばらくそいつを使ってこいつでミキシングするとこんな傾向になるという感覚がつかめてくる。
あとはその感覚を基に、いろんなモデルを試してみるのがいいと思う。
強いて言えば、YAMAHAのMSPシリーズやHPH-MT8はザ・フラットで癖がないと言われているので、楽器屋に行けないという人はその辺をチョイスすれば派手にコケることはないと思う。

スピーカーVSヘッドホン


DTMをやる場合、スピーカーとヘッドホンのどちらが向いているのか?
結論から言うと、ミキシングまで自分でやるのであれば「両方あるのが理想」だ。
スピーカーは定位や音像が捉えやすいし豊かな低音を得られる。
対してヘッドホンは細かい調整をするときに重宝する。
得意分野が異なるので、両方を用意して用途によって使い分けるのがベストになる。
もっと言えば、複数の環境で確認ができるように複数のスピーカーやヘッドホンを用意できるとすごくいい。
・・・なんて理想を語ってみたが、そんな環境を構築しようとすると平気で数十万円ふっ飛ぶので、DTMを始める段階ではモニタ用のスピーカーかヘッドホンのいづれか1つを用意して、もう一方はとりあえず家にあるオーディオ鑑賞用のスピーカーやヘッドホンを使うのがいいと思う。
どちらか一方しか用意しないというのであれば、

ミキシングは自分でやらない → スピーカー
ミキシングも自分でやる  → ヘッドホン

をオススメする。
というのも、ミキシングでは普段気にしないようなかなり細かい部分まで音を確認しなければならない。
で、スピーカーでこれを確認するには、ご近所トラブルもしくは家庭崩壊になるくらいデカい音を出す必要がある。
仮に出せたとしても、一般的な住宅の一室では音の反射がすさまじく、おそらく周波数のバランスがゴチャゴチャになるだろう。
防音室や反射音がコントロールされた部屋じゃない限り、スピーカーだけでミキシングをするのはあきらめたほうがいい。
また、そんな素敵な環境が用意できたとしても、やはり細かな音はヘッドホンのほうが確認しやすい。
結局のところミキシングにはヘッドホンが必須なのだ。
まあヘッドホンにも(スピーカーと比べて)音場や音像、定位を捉えにくいという弱点はあるのだが、そこは家にあるスピーカーを使ったりスタジオを借りるなどして対応するしかない。
ちなみに筆者の場合、曲をつくったりアレンジを考えたりするときは100%ヘッドホン。
スピーカーはミキシングの時以外使わない。

自分がDTMをする環境を良く考える

スピーカーは2本で1万円程度のものから1本で10万円を超えるものまで様々。
前述のとおり、やはり基本的には高額なものほどより優れたモニタ環境を手に入れることができるわけだが、同時に出力ワット数も上がってくる。
大きな音が出せない、防音処理がされていない、6~10畳くらいの環境でDTMをするのであれば20~30ワットくらいのモデルで十分だと思う。
防音処理をしてあったとしても50ワット以内だろう。
100ワットクラスのバカデカいモニタスピーカーを買ったとしても、それらは6~10畳くらいの部屋で最適に鳴らせるようには設計されていない。
そもそも一般住宅の一室で使うようなものではないのだ。
「ある程度デカくないと低域が確認できねーよ!」なんて声をたまに聞くが、そもそも一般住宅の一室で十分な低音を求めること自体に無理がある。
どうしても低域(40~50Hzくらい)を鳴らしたいのであれば、低域が豊かに鳴るヘッドホンなんかを使ったほうがいいだろう。

パワードスピーカーとパッシブスピーカー

モニタスピーカーにはパワードスピーカー(アクティブスピーカー)ノンパワードスピーカー(パッシブスピーカー)がある。
パワードスピーカーはスピーカーの中にアンプが内蔵されており、それだけで音が出せる。
対してノンパワードスピーカーはアンプが内蔵されておらず、別途アンプを用意しないと音が出せない。
DTM界での売れ筋は専らパワードスピーカー。
ノンパワードも使えないわけではないのだが、用意するアンプによって音質が変化するという特徴からモニタには適してないとされている。
オーディオ鑑賞になると逆にスピーカーとアンプの組み合わせを楽しんだりするので、そういう探究心のある人はいろいろ試してみるのも面白いかもしれない。
よくわからんという人はパワードスピーカーを買えばそれでOK。
価格が安いからという理由でノンパワードスピーカーを買ってしまうと別途アンプも買わなければいけなくなるので注意してほしい。

オススメのモニタスピーカー
オススメのモニタヘッドホン