超初心者のためのミキシング講座 / イコライザー編⑫【ボーカルのEQポイント(男性)】

今回は男性ボーカルのEQポイントをご紹介。
女性ボーカルはまた別の機会に。

ボーカルは生モノ中の生モノ。
案外そんなにEQ処理をしなくてもキレイにまとまる場合も多いので、生で聴いた声の印象とマイクで拾った声の印象のギャップを補正してやるというイメージで臨むといいと思う。

ボーカルの帯域別周波数成分

今回もサンプルを用意。
最初にお断り(言い訳)させてもらうが、筆者は決してボーカリストではないので歌声についてはノークレームでお願いしたい。
ぜひともスーツを着た中年のオッサンが汗だくで叫んでる姿を思い浮かべながら聴いてみてほしい
レコーディング環境については、Universal AudioのApollo TwinにRODEのNT-2Aを直挿ししてその辺の練習用スタジオで適当に叫んだだけなのであしからず。
ちなみに今回はApollo TwinのUnisonテクノロジーは使用していない(←オイ。)

聴いてみる。

今回はこいつのEQ処理をしてみようと思う。

【20Hz~80Hz】 超低域

いわゆる超低域。
ボーカルの場合、この帯域は要らない帯域と言えるのでハイパスでカットしてしまったほうがいい。
ノイズ対策としても有効。

【100Hz~200Hz】 量感、重み、男らしさ

声の量感、重みを感じる帯域。
女性ボーカルの場合はこの辺りまでハイパスでカットしてしまってもいい場合もあるが、男性ボーカルの場合はこの辺りをブースト/カットすると男らしさがコントロールできる。

【200Hz~600Hz】 太さ、温かみ、篭り

声の太さを感じる帯域。
ボーカルの土台となる場所でもある。
声が細いと感じた場合はこの辺りをブーストしてやるといい。
篭りが気になる場合は若干カットしてやるといいが、カットしすぎると一気にヘタレるので注意。

【600Hz~1kHz】 芯、コシ

声の芯となる成分が含まれる帯域。
存在感と言うべきか、ちょっと存在感が薄いな〜っと感じるときにこの帯域をほんのりブーストしてやるとググンと存在感が補填される。

【1kHz~3kHz】 ハリ、艶

ボーカルのメインになっている帯域。
ブーストするとハリ、ツヤを強調できる。
ボーカルがオケに埋もれてしまっているときにここを適量ブーストしてやると効果覿面。
ボーカルの一番オイシイ帯域。

【3kHz~16kHz】 煌びやかさ、空気感、歯擦音

主に煌びやかさ、空気感を感じる帯域。
ブーストしていくと空気感を含んだキラッとした印象になっていく。
また、3〜9kHzあたりには歯擦音(サ行)やブレスのぶつかり(特にタ行)等も含まれているので、それらと歌声のバランスを考えて処理する必要もある。

っとこんな感じ。

具体例

では、上記のポイントを使った例をいくつか。

高域をブーストして煌びやかさと空気感をアップ

vo-eq-3
4kHzあたりから上をハイシェルフで持ち上げて煌びやかさと空気感をアップ。
今回の例では500Hz付近を若干カットして篭りを抜いている。

荒々しさをアップ

vo-eq-2
上の例と似た内容だが、3kHz~8kHzあたりには、歯擦音や息のぶつかり(特にサ行とタ行)などが存在する。
ここをあえて多めにブーストすることで「スァッ!!」っという荒々しさが出る。
かなりレベルを持ち上げているが・・・歪んでも・・・オレは・・・気にしない。

太さを補強

vo-eq-1
200Hz、350Hz付近を適度にブーストして男らしさと太さを補強。
さらに900Hz付近もブーストして少し芯を出している。
篭りが気になる場合は350Hz付近はブーストせず、200Hz付近もほんのりブーストさせる程度にした方がいい。
また、マイクやマイクプリによって肉つきがよくなりすぎたかなと感じた場合は適量カットしてやるとナイスボディになる。

簡易ラジオボイス

vo-eq-4
ボーカルEQ講座の定番(笑)
周波数帯域を狭めてラジオや電話などから聴こえるような声に。
低域と高域をバッサリとカットし、2Khz付近をブーストして少し歪み感をだす。

まとめ

今回はここまで。
次回はこいつをオケに乗せてみる。

ではでは。

Chanomaオススメのミキシングアイテム

Universal Audio APOLLO TWIN

Universal Audioは1176や610などの名機と呼ばれるアウトボードを生み出しているアメリカの老舗プロフェッショナルオーディオ機器ブランド。 Apollo Twin は同社のハイクオリティDSPプラグイン「UAD-2」が利用できるDSPチップを搭載したコンパクトオーディオインターフェース。 「往年のアナログ機器のサウンドをプラグインで再現」というコンセプトのもとに開発されるUAD-2は、NEVE 1073、610、APIやSSL、1176、LA-2A、Pultec EQなど数々の名機をプラグイン化しており、その技術は世界中で非常に高い評価を得ている。 プロの定番プラグインであるWavesを始め、様々なブランドが名機のエミュレートプラグインをリリースしているが、ビンテージ機材のエミュレーション技術においては間違いなくUniversal Audioが群を抜いている。 最近ではMarshallやFender、Ampegのアンプシミュレーターなどもリリースしており、ギタリストやベーシストにもオススメ。 手にしたその日からワンランク上のレコーディング、ミキシング環境が手に入る。

Waves Plugin

プラグインエフェクトと言えば「Waves」。 多くのプロも使用しているハイクオリティエフェクト。 ありきたりな選択肢だが、やはり良いものは良い。 余計な音質の変化はないし、余計な味つけもされないし、エフェクトのかかり具合も良く、使い勝手も良く、狙った効果がきちんと得られる。 CPU負荷も比較的軽めなうえ、動作も安定しているので安心して使用できる点もGood。 一昔前に比べてかなり安く手に入るようになってきているので、コスパ面でもオススメ出来る。 Silver、Gold、Platinumをはじめ多数のバンドルがラインナップされており、目的やレベルに応じて様々な選択肢をチョイスできるのも嬉しい。

audio-technica ATH-M70x

海外で人気のMシリーズのフラッグシップモデル。 決して周波数特性がフラットという機種ではないが、こいつの中高域の情報量は驚異的。 空間表現能力も驚異的でゴチャゴチャしている部分が丸見え。 他のヘッドホンで聴こえなかった音が面白いくらい見つかる。 くっついてしまったり、隠れてしまっている音もこいつなら一つ一つしっかりと確認できる。 但し、中高域が耳に張り付いてくるタイプなので、低域のモニタリングは慣れが必要? 「低域もある程度見える超高解像度版900ST」といった感じ。

YAMAHA MSP5 STUDIO

銘機「NS10M STUDIO」を開発したチームによるニアフィールドモニター「MSP STUDIO」シリーズの一番小さいサイズ。 フラットさに定評があり、モニタスピーカーとして各方面での評価も高い。 音質も非常にクリアで音像や定位もしっかりと捉えることができる。 とにかく飾り気のない素直な出音が特徴。 コスパはかなり高い。