これされ知ってりゃなんとかなる!プリセット派ユーザーのためのシンセサイザー講座【第2回】

VCF

次にVCFのパラメータを見ていく。
VCFはVCOから発振された波形を加工する(削る)セクション。
波形を削ることで、音の明暗を調整できる。
具体的には「どんな方法」で「どこを削るのか」を設定してやることになる。

Filter(フィルタ)

波形を「どんな方法」で削るか選択するパラメータ。
有名どころでは以下のようなものがある。

Low-pass

設定した周波数以上の倍音成分を削るフィルタ。


Noise Makerのノコギリ派の周波数成分。

たとえば、上のような周波数成分の波形にLow-passフィルタを通すと以下の図のようになる。


設定した周波数以上の音をカット。

ものすごく簡単に言えば、波形に含まれる高音部分をカットするフィルタ。
低音部分が残る。

フィルター無し

Low-pass ON

High-pass

設定した周波数以下の倍音成分を削るフィルタ。
先ほどの波形に通すと以下の図のようになる。


設定した周波数以下の音をカット。

ものすごく簡単に言えば、波形に含まれる低音部分をカットするフィルタ。
低音部分が残る。

フィルター無し

High-pass ON

感の良いユーザーは気が付いたかもしれないが、Filterはイコライザー(EQ)というエフェクターと原理は同じである。

Cutoff(カットオフ)

波形の「どこを削るのか」を設定するパラメータ。
倍音成分を削る基点となる周波数を決定するパラメータである。
例えばLow-passフィルターの場合、このCutoffで設定した周波数以上の倍音をカットするということになる。


Cutoffの値よりも高い周波数帯域の倍音をカット。

Cutoffの値を小さくした場合はより多くの倍音をカットすることになる。

Cutoffの値をMaxにすると、全くフィルターを掛けない状態と同じになる。これがいわゆる「フィルター開きっぱなし」という状態。

Resonance(レゾナンス)

Cutoffで決定した周波数付近をブーストさせるパラメータ。
音色のクセ付けに使用する。


レゾナンスの値を大きくするとフィルターはこのような状態になる。

レゾナンス OFF

レゾナンス ON

VCA

Master

音色の最終的な音量を決定するパラメータ。
Master、Output、Vol等いろいろな呼び方がある。

えー!VCAってただ音量を変えるだけ!?と思ったユーザーもいると思うがそれだけではない。
例えば、ドラム等の打楽器は「パン!」と最大音量で音が鳴った後すぐに小さくなる。
また、ピアノの鍵盤を押し続けた場合は、最大音量で音が鳴った後ゆっくりと音量は減衰していく。
ストリングスなどの楽器は、音の鳴り始めから最大音量で音が鳴るわけではなく少し時間を置いて最大音量にたどり着く。
このように、音色の音量には「時間的な変化」という概念が存在する。
この時間的な変化を設定するパラメータがEG(エンベロープジェネレータ)というものである。

EG(エンベロープジェネレータ)

音量に時間的変化を加えるパラメーター。
時間軸上での各ポジションの頭文字をとってADSRとも呼ばれる。


Noise makerのEG。

MassiveのEG。デフォルトでは、Envの4番がVCAに設定されている。

ADSR はAttack(アタック)、Decay(ディケイ)、Sustain(サスティン)、Release(リリース)の頭文字で、時間軸を横に置いたときの各ポジションは以下の図のようになる。


A・D・S・Rそれぞれが時間軸のどこにあたるのかを把握するのが重要。

このADSRの概念は、様々なタイプのシンセサイザーやエフェクター等でも頻繁に使われるパラメータなので、ぜひ習得してしまいたい。
覚えておくとかなり役に立つ。

Attack

鍵盤を押してから最大音量に到達するまでの時間。
音の立ち上がりの速度を調整するパラメータ。
値を0にすると鍵盤を押すと同時に最大音量で音が鳴る。
値を大きくすると鍵盤を押してから最大音量になるまでの時間が長くなる。

Attack 0

Attack 遅め

Decay

Attackで到達した最大音量から、Sustainで設定した音量に移行するまでの時間を設定するパラメータ。
Decayを0に設定するとAttackの後、すぐにSustainで設定した音量に移る。

Sustain

Decayの後、鍵盤を押し続けている間の音量を設定するパラメータ。
他のパラメータが時間をコントロールするのに対して、このSustainだけは音量を調整するパラメータである点に注意してほしい。
値を0にすると鍵盤を押し続けていても音が止まる。
値を大きくすると、鍵盤を押し続けている間も設定した音量で音が鳴り続ける。

Sustain 最大

Sustain 最大値の約半分

Sustain 0

Release

鍵盤を放した後に音が鳴り終わるまでの時間。
音の余韻を調整するパラメータ。
値を0にすると、鍵盤を離すと同時に音が止まるようになる。
値を大きくすると、鍵盤を離した後、設定した時間をかけて音が鳴り止む。

Release 0

Release 遅め

Noise Makerの場合は、Masterセクションの下にAmp用のEGが搭載されているので、A・D・S・Rそれぞれのフェーダーを調整して値を変更する。
また、Massiveの場合はちょっと特殊で、SustainのパラメータはDecayの隣の「level」というパラメータになっている。
さらに、Attackの隣のlevelは音量の最大値を調整するパラメータである。
Attackの時間をかけてlevelの値まで音量が上昇するというわけだ。


SustainはDecayの隣のlevelというパラメータ。

シンセサイザーのSustainは一般的に使われるサスティンとは意味合いが少し違う点も注意してほしい。
ピアノ等で一般的に使われるサスティンはシンセサイザーではReleaseに該当する。
また、このEG(ADSRというパラメータ)はVCAだけでなくVCOのピッチやVCFのパラメータに時間的な変化を与えたい場合にも使用することもある。
これについては次回紹介する。

どうだろう?
ここまでにアナログシンセサイザーでの音作りのメインとなるVCO、VCF、VCAの役割と各セクションの代表的なパラメータを紹介させてもらったが、意外と簡単だと感じたのではないだろうか?
この3つのセクションをいじれるようになるだけでも「ここをもう少しこうしたい!」というニーズには意外と対応できたりするので、是非覚えてしまうことをオススメする。
次回は、その他のよく使うセクションとそのパラメーターを紹介する。